【名盤紀行 】
Vol.16 ライ・クーダー

【名盤紀行 】


長崎市出身、広島市在住。映像&イベントの制作会社の広島本社に20年、東京支社に10年勤務。今は「レコードバー野中サンハウス」の店主。今日のレコードは、なあに?

こんち、これまた、ご機嫌いかが?流川の「レコードバー野中サンハウス」店主でございます。2018年冬に開店した「野中サンハウス」では、「アナログ・モノラル・ローファイ」を合言葉に、日々様々な音楽をお楽しみいただいております。が、マンボウ再延長で、今しばらくおとなしくいたします。で、暇にまかせて、ついついYou Tubeに手を染めてしまいました。「野中サンハウス」で検索して、お暇つぶしにどうぞ。

さて本題、2022年2月25日から、八丁座にて「ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティブ」が始まります。2週間限定で10作品日替わり上映、3月10日まで、いつ行く?ワシは、2月27日「パリ、テキサス」を見に行く!

「ロード・ムービー」と言えば、ヴィム・ヴェンダース!と断言はしませんが、多いのは確か。1984年、第37回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した「パリ、テキサス」も一応ロード・ムービーに分類されているようです。とにかくオープニングが秀逸。主役のハリー・ディーン・スタントンの無表情も凄いが、なによりも音楽が素晴らしい。

スライド・ギター名手ライ・クーダーが、盟友デヴィッド・リンドレーと演奏するメイン・テーマ。原曲は、1920年代に活動していたブルースマン、ブラインド・ウィリー・ジョンソンの「Dark Was the Night, Cold Was the Ground」。この曲、NASAによるボイジャー計画で、異星人に聴かせたい曲に選ばれている、ありがたい曲でもあります。さて、映画のストーリー、実は文章化しづらい。ので、割愛します、お許しを。この映画、見どころがたくさんありますが、ズバリ、ナスターシャ・キンスキーが美し過ぎる。映画史に燦然と輝く美しさであります。ああ、早く大きなスクリーンで見たい。

1997年に「エンド・オブ・バイオレンス」で、再度手を組んだヴィム・ヴェンダースとライ・クーダー。で、2人の努力が報われるのは、その次の作品、1999年「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」。実に大きな実を結ぶのである。これぞまことのロード・ムービーではなかろうか。ライ・クーダーが息子と一緒にキューバを訪れ、伝説のミュージシャンを探す旅。第2次世界大戦後にアメリカのブルースマンを再発見したブルース研究家のように、ライ・クーダーがキューバのミュージシャンを再発見していくのであります。

そして、セッション&レコーディング。あげく、海外公演まで実現。沢山の歌手・演奏家が本当によみがえりました。ちなみにこの映画、第72回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされ、世界中で上映されました。この度の八丁座での上映は、3月3日と3月7日、ぜひどうぞ。なお鑑賞前に、予習としてレコードを聴いておくのが良案。その当時は、CDしかリリースされてなかったはずが、探してみると、こっそりLPが出ていたので、購入いたしました、ウレシイ。

さて、ライ・クーダー、実は映画音楽を沢山手掛けております。特にウォルター・ヒル監督作品で、その辣腕を大いにふるっております。その代表作が、1980年の「ロング・ライダーズ」。南北戦争後に実在した強盗団、ジェシー・ジェイムズの物語。この映画、銃撃シーンが素晴らしく、さすがはウォルター・ヒル!が、さらに注目したいのは、キャスティング。登場人物は、兄弟だらけ。全員、本物の兄弟が演じているのです。主人公、ジェシー・ジェイムズはジェームズ・キーチ、兄のフランクは、ステイシー・キーチ。仲間のヤンガー兄弟は3人。長男コール・ヤンガーはデヴィッド・キャラダイン、弟のジムとボブはキース・キャラダインとロバート・キャラダイン。

のちに「キル・ビル」で有名になった、デヴィッド・キャラダインが無茶苦茶格好良い。さて、仲間はまだいて、ミラー兄弟、兄のクレル・ミラーはランディ・クエイド、弟エド・ミラーはデニス・クエイド。さらに仲間のふりしてジェシー・ジェイムズを裏切る卑怯者、兄のチャーリー・フォードはクリストファー・ゲスト、弟のボブ・フォードはニコラス・ゲスト。実に俳優4兄弟、総勢9名。よくぞお集めになりました。おおっと、勿論ライ・クーダーの音楽も素晴らしい、とくにオープニング曲、ええです。

さて、ライ・クーダー、私にとって非常に重要な音楽家ゆえ、また改めてお話をする所存でございます。1947年生まれ、74歳。今も元気で、まもなく盟友タジ・マハールと一緒にブルース・アルバムをリリースするそう。で、このレコードは、1986年のベスト盤「Why Don’t You Try Me Tonight ?」。なかなかの選曲、便利な一枚でございます。

では、おまけ。ライ・クーダーの4歳先輩、ザ・バンドのギタリストだったロビー・ロバートソンの映画音楽盤「CARNY」。レオン・ラッセル、1972年の作品に同名のレコードがありますが、全く関係なし。1976年にザ・バンドは解散。解散後、ロビー・ロバートソンが初めて出したレコードが、この「CARNY」、1980年。実はこの映画、日本で公開されていないらしい。なのに、サウンドトラックの日本盤が出ているという奇妙さ。

ジャケット写真を、よーくご覧ください。左の男優は、この際、触れませぬ。右の男が、映画を企画し主演もしたロビー・ロバートソン。では、真ん中の女性は誰?なんとジョディ・フォスター、当時おそらく18歳!あのロビー・ロバートソンが音楽を担当し、1976年の「タクシードライバー」で脚光を浴びたジョディ・フォスターが出演するのに、日本公開されなかった悲しい映画。正直に申しますと、私「ジャケ買い」しました。美しいジョディ・フォスターが、写っているだけで大満足の1枚、と悔しまぎれに…。

さて、今回は、八丁座での「ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティブ」上映記念としてライ・クーダーなどのお話をいたしました。さて、そんなこんなレコードが、そこそこある「レコードバー野中サンハウス」へ、ぜひおはこびください。月に一度、RCCラジオの人気番組「バリシャキNOW」にお呼びいただき、蓄音機で2曲回しています。次回は、3月14日月曜日に出演する予定です。また、タウン情報ひろしまでは、「レコード女子のススメ」というコラムを書いております。毎回、レコードプレゼントがございますので、是非!

さて本日はここまで。今日も明日も名盤聴こう!それでは、みなさん、ごきげんよう。

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