【広島人の履歴書】
File.4 兼森雅弘さん 株式会社カネヒロデンシ 代表取締役会長 《前編》

【広島人の履歴書 】


広島と縁のある各界のオピニオンリーダー自らが語る今日までの足跡。知られざるエピソード満載の履歴書(プロフィール)には、現在を生きるヒントが隠されています。

少年時代は運動も勉強も大の苦手⁉
電子機器の開発を目的に三原で起業

生まれ故郷の広島県三原市で2003年、「カネヒロデンシ」を個人会社で創業して以来、まもなく20年を迎えようとしています。電子機器の開発を目的にスタートしましたが、現在はLED関連商品の開発・製造事業が主力に成長しており、地球環境の保護にもつながるLED照明の可能性を追求しているところです。子供の頃から運動も勉強も得意ではなく、大雑把な性格のわたしが今日まで飽きもせずに取り組んできたものづくりの道のりを振り返ってみます。

わたしは1956年7月28日生まれ。実家は、現在の三原市役所の少し西にある臥龍橋の近くで、父は三菱重工三原製作所に工員として務める傍ら、母と兼業農家を営んでいました。わたしが生まれる前に二人兄がいたのですが、当時の流行病の黄疸にかかってすぐに亡くなったため、自分が長男となり、下に妹がいます。幼稚園から中学校までは広島大学付属三原幼稚園・小学校・中学校に通いました。

小さい頃は、自由気ままそのもの。人の言うことは全く聞かず、身なりも気にせず、歯も磨かず、しょっちゅう忘れ物をするのでよく叱られていましたね。祖父母、父母から代々続くO型の血統のせいか、とにかく大雑把な性格で、いまでもそうですが、何をするにも緻密ではないんですよ。加えて、もともとぽっちゃりした体形で左心房ブロックの障害があったせいか、走ったり、飛んだりするのが苦手で運動が大嫌い。ちなみに勉強は運動よりももっと嫌いでした。当時はテレビが普及し始めた頃なので、休みともなれば朝から晩までテレビの前にかじりついて、白黒画面の鉄腕アトムや鉄人28号のアニメに夢中になったものです。

小学校に上がるとプラモデル作りに熱中しました。特に戦車の模型を作るのが好きだったのですが、モーターの配線は手で捩って付けるだけなので動かしているとすぐ外れてしまうんです。工作ごとが趣味で家のテレビやラジオをしょっちゅう修理していた父に「配線を固定する何か良い方法は?」とたずねてみると、はんだによって金属を継ぎ合わす“はんだ付け”のやり方を教えてくれました。

はんだ付けを覚えてからというもの、戦車の配線は外れなくなるし、小学校4年頃から流行したゲルマニウムラジオを作る時も友だちにはできない技術だから自慢できるし、良いことずくめでした。はんだ付けができたおかげで小学校高学年にもなると、中学3年生が技術の教材で扱う真空管が5本あるラジオの“5球スーパー”のキットくらいは作れるようになっていましたよ。考えてみると、ゲルマニウムラジオにはまったのが電子機器を扱ういまの仕事の原点だったのかもしれません。

運動が苦手なので、中学時代のクラブ活動も、もちろん技術クラブです。小学校からの趣味の延長で電気のキットを作ったり、工作ごとに没頭していましたね。そして高校は広島県立三原高等学校へ進学。文系ではなく理系だったこともあり、大学受験は、深く考えもせずに国立大学の農学部を志望したところ、案の定受かりませんでした。結局、現役入学を強く望む父の意向もあって滑り止めに受けて合格していた大分県にある私立大分工業大学(※現・日本文理大学)電気科に進学した次第です。

父の命令に従って、あまり気の進まないまま入学した大学でしたが、人生は面白いもので、この頃から自分でやりたいことを考えるようになったんですよ。当時はまだ学ラン姿の学生が校内を闊歩する九州のバンカラな気風に馴染めず、仕方なく勉強に集中すると3年生前期で電気工学部の一般課程の単位は全部取れ、成績の良い学生を助手に使いたかった先生に研究室に誘われて音の研究をしていました。その経緯もあって就職活動も兼ねて東京の国分寺にある補聴器メーカーのリオン株式会社に研修に行くことに。2年間の研修を終え、このまま東京で就職しようと、大学から勧められた相模原の会社に内定をいただいていたのですが…。

住居となるアパートを探しに訪ねた不動産屋で東京近郊の一軒家の当時の分譲価格が3500万円であることを知ったんです。自分の内定した会社の初任給が12~13万円だったのを頭に浮かべると「ずっと働いたところで絶対に買えないな」とため息がでましたね。そんな時、三菱電機福山製作所の子会社、株式会社福山工作所からも大学に募集があることを聞きました。こちらの初任給は10万円でしたが、東京の12~13万円と福山の10万円を比較して、一軒家の分譲価格や物価の違いを考えたわたしが就職先に選んだのは後者でした。結果的に内定を蹴ったことになり、申し訳ないことに学部長が先方に頭を下げに行くほど大騒ぎになったそうです。

ともあれ、大分での大学生活、東京での研修期間を経て、故郷の三原にUターン。自宅から福山工作所に通う社会人生活がスタートしました。朝8時始業から、終電までがむしゃらに働く日々が2~3年続いた頃、親会社へ設計部門の応援に行くよう命じられました。仕事は電子機器のブレーカーやメーターの設計などのお手伝いですが、福山工作所に在籍した17年のうち、トータルで10年くらいは三菱電機福山製作所に通ったと思います。

親会社の設計部門は専門の方も多く、最初の頃はしんどかったですね。電子機器の設計もまだ手描きの時代で、わたしが初めて任されたのが5㎝四方のプリント基板設計でした。まだ要領を得ないまま1ヵ月かけて設計したところ、「出来が悪いから」とあえなくボツでした。2回目は2週間で仕上げると、なんとか製品にしてもらえましたが、どちらも、いまならCADがあるので2時間で出来るくらいの仕事です。この頃は「あいつは1ヵ月かかってもできなかった」と周りの評価も低かったですね。

経験を積むごとに認めてもらえるようになりましたが、昔から、どちらかというと仕事のスタートは人より遅いと思います。まず運動神経が鈍いですからね。そのうえ気が短いので、すぐに「もうやめた」と口に出してしまう。ただ、自分が与えられた課題をできないことに対してあきらめきれず、「何か工夫してみよう」「違うやり方でトライしてみよう」としぶとく粘ってしまうんですよ。普通に設計をする人が匙を投げてしまうような仕事もわたしの場合は、どうしても「なぜできないのか?」が引っ掛かるため、最後まであきらめません。周りの人はそんな性格を知っているので、悔しいことに面倒な設計の時はわたしを上手に使っていたようです。

三菱電機で設計を手掛ける一方、福山工作所に帰るとブレーカーの製造ラインで作業工程や人員のコントロールなどを担当していました。仕事に馴れると両方とも、それなりに強弱あって面白く感じていたのですが、会社の経営陣の交代を機にわたしに命じられたのは別会社への出向でした。出向先となったのは電子機器関連の設計、開発、試作業務などを行う福山市の株式会社エーシックです。のちにそのまま移籍して合計7年間在籍したこの会社では設計だけでなく、自分で仕事を取って来る営業もやらなくてはいけなかったので、何でもこなした経験がいまも役に立っていますね。

独立したのは高血圧で体調を崩したのが切っ掛けです。単純に太り過ぎだったのですが、三原の病院に週に何度も通う羽目になり、会社が福山にあるのは都合も悪いので思い切って起業することを決めました。社名は、エーシックで取引先だった宗教法人さんに相談したところ、姓名判断で「全部カタカナの商号が良い」と伝えられて、わたしの名前の最初と最後の“カネ”と“ヒロ”をつないで命名したものです。

こうして、まもなく47歳を迎える2003年5月、電子機器の開発を目的とする「カネヒロデンシ」を創業する運びとなりました。社員はわたし一人、個人会社での船出です。ちょうどエーシックから独立した時に、大手のビジネスホテルなどで採用されるエアコンの電子式スイッチの特許をわたしの名義で取得できたことから、創業当初は業務用空調スィッチ「FK型空調SW」を製作し、ホテルや病院、マンションに向けて納入していました。その空調スィッチの中の部品にひとつだけあったのが、現在、当社が主力製品としている「LED」(※ light emitting diode=発光ダイオード )なんですよ。以下、《後編》に続く。

《兼森雅弘(かねもりよしひろ) PROFILE》

1956年7月28日生まれ。広島県三原市出身。2003年5月、電子機器の開発を目的として個人会社設立。2004年5月、事業拡張に伴い法人組織に変更、有限会社カネヒロデンシ設立。2006年12月、業務拡大により現在の株式会社カネヒロデンシに組織変更。2011年12月、関連会社I-Light株式会社設立。

【会社概要】

社 名株式会社 カネヒロデンシ
代表者代表取締役 会長 兼森 雅弘
代表取締役 社長 竹田 昭典
資本金7,000万円
事業内容LED照明機器の開発・製造・販売 、LED製品等のレンタル、
電子機器の開発・製造・販売、電機計装工事
本 社〒722-1414 広島県三原市久井町坂井原5805番地1号
TEL 0847-32-6248  FAX 0847-32-8180
事業所■九州営業所
〒815-0074 福岡市南区寺塚1丁目6-5 パロマヴィラ寺塚205号
TEL 092-409-7305  FAX 092-409-7605
■三原経理オフィス
〒723-0011 広島県三原市東町1丁目4-1 
TEL 0848-62-0843  FAX 0848-64-7944
関連会社I-Light株式会社 上海広金電子貿易有限公司
SIアグリテック株式会社

■カネヒロデンシ ホームページ
http://kanehirodenshi.co.jp/
■カネヒロデンシ フェイスブックページ
https://www.facebook.com/kanehirodenshi.co.jp/

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