【名盤紀行 】
Vol.20 フランク・ザッパ

【名盤紀行 】


長崎市出身、広島市在住。映像&イベントの制作会社の広島本社に20年、東京支社に10年勤務。今は「レコードバー野中サンハウス」の店主。今日のレコードは、なあに?

こんち,これまた、ご機嫌いかが?流川の「レコードバー野中サンハウス」店主でございます。2018年冬に開店した「野中サンハウス」では、「アナログ・モノラル・ローファイ」を合言葉に、日々様々な音楽をお楽しみいただいております。この夏、我らが八丁座、音楽ドキュメンタリー映画8連荘、なんと素敵な、なんと無謀な、本当にアリガタイ。そして,そして、なな、なんと、「ZAPPA」が7月29日(金)から8月4日(木)の1週間上映であります。ワタクシ的には、絶対必見であります。

フランク・ザッパ、1940年、アメリカ東部ボルチモアの生まれ。ジョン・レノンと同い年。ザッパはご幼少の頃、意外にも体が弱く、喘息療養のため、一家はカリフォルニアに移住。12歳から音楽を始め、14歳で前衛的な作曲家、エドガー・ヴァーレーズに心酔。19歳で作曲家デビュー、1966年レコードデビュー。その後は、とんでもなく様々な活動を展開し、1993年、たったの52歳で他界、本当に残念である。

さて、映画「ZAPPA」。上映時間128分。前衛音楽、ノイズ、ブルース、ドゥーワップ、ジャズ、クラシック、現代音楽などなど、多岐にわたる表現と、あまりに多い作品数、たった128分ではムリ、だが、どのあたりに焦点を絞るのか、とても楽しみだ。海賊盤と戦ったこと、レコードの直販システムを確立したこと、薬物を完全に否定する姿勢、厳しいオーディションと長い練習の結果演奏可能なジャンピング変拍子、死の直前ウィーンでクラシック楽団と共演したこと、などと予想しながら、公開日をじっと待つ。

ワタクシ、実はザッパのこと、妙に好きなのであります。それが証拠に、店のトイレのドアには、「ザッパのレコードが大量にCD化された際のポスター」が貼ってあります。さらに白状すると、トイレのドア内側にも、「便器に座ってギターを弾くザッパのポスター」が貼ってあるのです。ぜひ、見に来てください。さて、ここでザッパ豆知識。1972年、ディープ・パープルの大ヒット曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」は、「ザッパのコンサート中に火事が起きて、湖畔に煙が漂った」と言う実話だそうで。火事が起きなければ、あの必殺ギター・フレーズは生まれなかったのかも、と思えば、ザッパに感謝であります。けど、火事には注意してね。

わたしらがガキだった頃、NHK-AM「若いこだま」がNHK-FMに移行し、音質が良くなって喜んで聴いておりました。もちろん渋谷陽一の番組が多かった。その渋谷がある晩かけたザッパが、このアルバム、1970年の「チャンガの復讐」、A面1曲目「トランシルヴァニア・ブギー」。普通のブルース進行ではなく、どこか中近東を彷彿させる謎のギターソロが延々続くのです。凄く気持ち悪いことが、妙に気持ちよかった。ちなみに、のちに多くの日本人が気軽に使うようになった単語「リベンジ」、ザッパファンはこのタイトルで覚えたはず。

ザッパ熱がとどまらない渋谷陽一氏、またしてもかけてくださいました。1974年のライブ・アルバム「ロキシー・ライヴ / ロキシー&エルスウェア」、A面1曲目「囚われのペンギン」。まずザッパ御大将、演奏前に低~い声で沢山しゃべる。で、とても面倒くさい曲を生で演奏する。やはり、ギターソロは長い。またしても気色悪く、妙に快感でありました。また、のちに映像で見てびっくりするのですが、マリンバを叩いている女性、ルース・アンダーウッドのなんと美しいことか。実はこのお方、1969年頃からザッパを支えている、腕利きミュージシャン、イアン・アンダーウッドの奥様でもあります。ご夫婦そろってザッパ・バンド、う~ん素敵。

あまり、レコードが売れないフランク・ザッパにも少し売れたものがあります。1969年の「ホット・ラッツ」。本国アメリカよりもイギリスで評価され全英9位、またイギリスの音楽専門新聞「メロディ・メイカー」にて、アルバム・オブ・ザ・イヤー。このアルバム、実は今も人気盤。私は、随分前に購入しましたが、つい昨年、新品のLPレコードがリリースされたので、新たにゲットいたしました。非常に、良い気分でございます。おすすめ曲はA面2曲目の「ひものウイリー」。高校の同級生、キャプテン・ビーフハートのヴォーカルもいかすが、長~~いギターソロが、やっぱりたまりませぬ。

1992年9月に行われたコンサートのライブCD「イエロー・シャーク」は、1993年11月に発売されました。ザッパは、1993年12月4日に帰らぬ人となるので、遺作と呼んで間違いない。ザッパ作曲の楽曲は、非常に複雑で、余程の演奏技術があっても、ザッパが納得できる正確で緻密な再現は無理、と本人ですら思っていたらしい。

そこに現れた、ドイツの室内楽団「アンサンブル・モデルン」、現代音楽に命をかけるバカテク楽団。ザッパもその気になり、リハーサルを念入りに行い、ついに実現したコンサート。1992年9月17~19日フランクフルト、22&23日ベルリン、26~28日ウィーン。音楽の聖都、ウィーンでザッパ、素晴らしい。フランクフルト公演の初日と3日目のみ、ザッパ本人がタクトを振ったが、健康状態は悪化しており、その他の公演にザッパは参加していない。ちなみに、トム・ウェイツは、このアルバムを絶賛したそうで、ええ話。

今回は、フランク・ザッパの映画上映記念で、ザッパのこと、ほんの一部書きました。ご興味の湧いた方、ぜひ弊店「レコードバー野中サンハウス」にお運びください。月に一度ほど、RCCラジオの人気番組「バリシャキNOW」にお呼びいただき、蓄音機で2枚回しています。次回は、8月8日、月曜日に出演する予定です。また「タウン情報ひろしま」に「レコード女子のススメ」というコラムを寄せています。レコードプレゼントあり、ぜひご応募ください。

さて、本日はここまで。今日も明日も名盤聴こう!それでは、みなさん、ごきげんよう。

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