【名盤紀行 】
Vol.17 ビリー・ホリデイ

【名盤紀行 】


長崎市出身、広島市在住。映像&イベントの制作会社の広島本社に20年、東京支社に10年勤務。今は「レコードバー野中サンハウス」の店主。今日のレコードは、なあに?

こんち、これまた、ご機嫌いかが?流川の「レコードバー野中サンハウス」店主でございます。2018年冬に開店した「野中サンハウス」では、「アナログ・モノラル・ローファイ」を合言葉に、日々様々な音楽をお楽しみいただいております。2022年春、ついにあの映画が公開される。タイトルが凄い。「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」。一体どんな映画なのか?

そもそも、ビリー・ホリデイとは?偉大な黒人女性ジャズ・シンガー。1915年に生まれ、1933年18歳の時、ベニー・グッドマン楽団と録音。1935年頃は、ニューヨークにおいて、ジャズ・スターとなる。が、その後は、様々な不幸に見舞われ、1955年他界。享年、たったの44歳。本当に短い人生であったが、乱暴に言うと「一番有名な女性ジャズ・シンガー」である。

人気絶頂期の1939年、ビリー・ホリデイは、ある曲と出会う。ルイス・アレンという高校教師が作詞・作曲した「Strange Fruit」。日本語に訳すと「奇妙な果実」。歌詞の意味は、「南部の木々には、奇妙な果実がぶら下がる」と言うもの。つまり、リンチを受けた黒人の死体が木につるされていると、告発する唄なのである。大手レコード会社コロンビアは、この曲の過激な内容を嫌い、レコーディングを拒否。そこで、小さな会社、コモドア・レコードで録音した。その後、多くの黒人聴衆から支持されたようだ。その人種差別に抗議する曲を歌った黒人女性に対して、アメリカ合衆国が何をしたのか?と言う恐ろしい映画が4月15日からサロンシネマにて公開。やはり、必見でしょう。

これがLPの「奇妙な果実」。ガキの頃はジャケット写真が、あまりにも怖くて買えませんでした。よく見るとビリー・ホリデイは、とても綺麗な人なのであります。でも、曲の内容を思えば、やはり怖い。ちなみに、暗い曲は「奇妙な果実」だけなので、ご心配は無用です。

このLPのタイトルは、「BILLIE HOLIDAY AT JAZZ AT THE PHILHARMONIC」。A面はライブ演奏。大きな舞台で「奇妙な果実」を歌っている。もちろん、ラブソングも歌っているし、B面のスタジオ録音も名曲が多い。お得な1枚であります。

ワシの小さなレコードバー「野中サンハウス」には、90年ほど前の蓄音機がありまして、SPレコードの音も楽しめるのであります。冒頭で申し上げましたように、1933年、ベニー・グッドマン楽譜団と録音したビリー・ホリデイは、1935年、ピアニストのテディ・ウィルソンの楽団と録音している。20歳でこの歌のうまさは、思わず唸る。軽快で可愛らしいラブソング。

さて、いよいよSP盤の「奇妙な果実」の登場であります。レコードのラベルもしっかり「コモドア」であり、1939年の同じ録音と思われます。が、何度聴いても同じ曲に聞こえないのであります。ずっしりと重い。聴く者の気持ちを彼女の声が、深い暗闇に引きずり込むような感じ。なので、まず店では回しません、いやほんま。

今回は、映画「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」公開記念として、ビリー・ホリデイのお話を致しました。楽しい映画ではありませんが、ぜひサロンシネマでご覧ください。さて、そんなこんなレコードが、そこそこある「レコードバー野中サンハウス」へ、ぜひおはこびください。月に一度ほど、RCCラジオの人気番組「バリシャキNOW」にお呼びいただき、蓄音機で2枚回しています。次回は、4月11日月曜日に出演する予定です。また、第4水曜日には、FMちゅーピー「イブニング・ストリーム」にてレコードを数曲回します。さらに、タウン情報ひろしまでは、「レコード女子のススメ」というコラムを書いております。毎回、レコードプレゼントがございますので、是非!

さて本日はここまで。今日も明日も名盤聴こう!それでは、みなさん、ごきげんよう。

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