【実践!里山生活術 】
Vol.17 薪ストーブのノウハウ(2)薪づくり

【実践!里山生活術 】


里山とは、環境省によれば「原生的な自然と都市との中間に位置し、集落とそれを取り巻く二次林、それらと混在する農地、ため池、草原などで構成される地域」。日本人の原風景が感じられる北広島町の里山で暮らす“里山コーディネータ”山場淳史さんのコラムです。

運用ノウハウシリーズ、第2回目は薪づくりについてです。前回も触れたとおり、この領域は極めて多様な価値観があり、またグッズへのこだわりがある方にとってはマニアックな世界も用意されています。ここでは我が家というか、私の趣味な世界もあるかもしれませんが、どうぞお付き合いください。

薪づくりのスタートは、山から木を伐り出すところから始めるのか、既に適当なサイズに玉切りされた丸太を購入して始めるか、あるいはその中間でラフな原木を運んでもらって自分で玉切るか、それだけでも様々な場面設定ができます。特に立木を伐採したり玉切ったりするにはエンジン式のチェーンソーが必要で、そのチェーンソーの選び方やメンテナンス、さらには安全管理だけでも何回分かは連載できるくらい奥が深いものです。

ここでは、その領域には踏み込まず、あくまで一般家庭が対応できるような丸太を入手して薪割りする場面から始めたいと思います。もちろん、実際に里山に暮らす前までは、私も週末に自ら近所の立木を伐採して薪まで仕上げるということにヤル気満々だったのですが、運動系のクラブに入った子どもたちのスケジュールに翻弄され、早々に伐採からのスタートは諦めました。

幸い、スギやヒノキなどの針葉樹の原木はいろんな方から声をかけていただいたり、仕事やプライベートの延長で分けてもらったりして、とりあえず重量的に運べる長さ(約1.2m)にチェーンソーで玉切って車で運搬し、我が家の土場で薪の長さに玉切りして積むことからのスタートです。※写真:原木を積み込んだ薪棚の様子。

ただし、針葉樹といっても人工林であるスギやヒノキの場合は、材が真っ直ぐで比重も比較的小さいので自力でもなんとかなりますが、天然のアカマツなどの場合は形が不定形で重く、我が家まで運んでくるまでも大変な作業になります。特に根元近くの一番玉といわれるような部分は重くて、とても一人では運べません。腰を痛めないようにしましょう。

そして薪づくりとして最も労力のかかる工程は割る作業です。もちろん強力なエンジン式の薪割機を使えば多少硬いアカマツの材でも楽々割れるのですが、ここはなんとか自力で斧での薪割りにこだわりたいものです。伝統的な国産の薪割り斧もあり、それらも魅力的ですが、我が家では「グレンスフォシュ・ブルーク」というメーカーの斧を使っています。※写真:斧に刻まれた職人さんのイニシャル。

グレンスフォシュはスウェーデンの首都ストックホルムから330キロ北の小さな町にある工場で、基本理念に基づいて職人がひとつひとつ手づくりし、満足した製品にだけその職人がイニシャルをヘッドに刻み込むことで有名です。ちなみに我が家の斧には「RA」と彫られており、調べるとその職人さんはAndersson Runeさん(現在は引退)だそうです。こうしたストーリーもこの斧の魅力ですね。

斧だけでも様々なタイプがありますが、本格的に薪割りをしようとするなら、そして体力・筋力に自信があれば、重厚なハンマーヘッド付きの長めの斧と、鉄製の薪割り専用の楔(クサビ:我が家はドイツ製)の組み合わせをオススメします。ヘッドだけで2.4kgありますので、長さ80cmほどの柄で振り下ろすと直径30cm程度のスギ丸太なら斧側で力をあまりかけなくても一発で割ることができます。※写真:楔と組み合わせた割り方。

径が大きい、または硬い材の場合は、コンクリート用槌などで中心に楔を軽く打ち込んでおいて、その楔をハンマー側で思いっきり叩くと、スリットが入り、捻れた形状の楔が材に食い込みながら破断していきます。このコンクリート用槌は斧部分で割ろうとした際に途中で止まった時、ハンマー側を叩いて最後まで割るのに便利です。ただし、特に枝分かれした箇所に楔が入り込むと、叩いても叩いても割れず、逆に取り出すことも難しくなるので要注意です。※写真:楔が食い込んだ様子。

まれに当たり損ねたり抜け落ちたりした際に楔が足元に飛んでくることがあるので、私は安全靴だけでなく、チェーンソー用のチャップス(保護カバー)をスボンに装着して作業しています。また金属音が気になる場合には耳栓なども必要でしょう。ただし、周りに人、特に子どもがいないのを常に確認しないとたいへん危険です。

私の場合、競技スポーツとして剣道をやっていたので重たい棒を振り下ろす強度や精度については多少自信がありましたが、そうでない方は腕や手首を痛める可能性もあるのでトレーニングが必要かもしれません。慣れれば薪割りそのものが筋トレになるので、継続すれば上半身ムキムキになれるぞ!と思っていましたが、最近は体力がないのと、いわゆる五十肩に近い症状も出てきたので,ほどほどに楽しもうと思っています。※写真:本格的な薪割りの様子。

最後に、薪割りの時期は、多少暖かくなった春先に、その冬で使って空いた薪棚に新しく割った薪を並べていき、次のシーズンで使うのが理想です。そのためには、その時点で原木が確保できていないといけないので、なかなかタイミングが難しいですね。我が家も毎年思案しながらやり繰りしています。

さて、次回は生活の中での運用の効率化についてです。こちらも試行錯誤の連続ですが、最近やっとコツを掴んできました。エアコンとの組み合わせもご紹介したいと思います。

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