【実践!里山生活術 】
Vol.18 薪ストーブのノウハウ(3)高断熱・高機密住宅での運用

【実践!里山生活術 】


里山とは、環境省によれば「原生的な自然と都市との中間に位置し、集落とそれを取り巻く二次林、それらと混在する農地、ため池、草原などで構成される地域」。日本人の原風景が感じられる北広島町の里山で暮らす“里山コーディネータ”山場淳史さんのコラムです。

これまで「薪」を中心に扱ってきましたが、今回は「ストーブ」、つまり主に寒期における暖房の手段としての運用についてです。このテーマも同様に、さまざまなスタイルが想定されるかと思います。我が家のように家の新築時に合わせて薪ストーブを導入する場合なら、キーポイントは高断熱・高機密住宅という住環境の条件です。

本コラムのvol.14でもご紹介したとおり(というか本号は実質的にその号の続きに当たります)、我が家で信州カラマツストーブを導入したのは、その強力な燃焼性能によって家全体を丸ごと暖めたい!という、自然エネルギー原理主義的とも言える純粋で無謀な発想からでした。

実際に、ちょうど真冬から居住し始め、早々にその理想を追求し始めることができたのですが、すぐにそれはいろいろと難しい?ということにも気づく結果となりました。特に当時、我が家には生まれて6ヶ月の赤ん坊(次男)が薪ストーブのある1階にいましたので、張り切りつつも気をつけないといけないことも多かったのです。

※写真:動き回って何をやらかすか分からない幼児が薪ストーブの一番の天敵かも?

部屋の乾燥・保湿や火傷防止など、薪ストーブに限らず、育児環境下でよく取り沙汰される課題もいくつかありましたが、中でも一番気を使ったのは換気と暖房のバランスです。ご存知のとおり、新築の住宅は建築基準法で24時間換気システムの設置が義務付けられています。これは気密性の高い最近の住宅で主にシックハウス対策として導入されているものですが、ここに薪ストーブが加わるとどうなるのでしょうか。

我が家の場合、第3種と呼ばれる機械排気・自然給気の換気システムですが、薪ストーブが順調に燃焼中はそれ自体も排気側として働きます。問題は薪の着火時や燃焼が弱い時、特に我が家のように煙突が屈折して長いと室内外の気温差で排気に力が必要な条件が重なる場合、全体として排気側にバランスが寄ってしまい、薪ストーブや煙突が給気側に働いてしまうのです。そうなると着火時の煙が室内に戻ってしまうだけでなく、最悪の場合、一酸化炭素が逆流して室内に充満する恐れも全くないとは言えないのです。

※写真:我が家の一酸化炭素チェッカー。消火器の期限切れにいま気づく⁉

もちろん、これは強調したいのですが、正しい使い方や通常の換気の範囲内では、冬場は寒くてしたくないけど、窓を少し開けるなど対応すれば、キッチンのレンジフードを強めに回したりしても経験的にほとんどの場合は安全性に問題はないと思います。もし煙が少し漂った時点でも普段ならすぐ気付けます。問題は夜間就寝時など気づくのが遅れやすい時間帯で、「万が一」のケースを考えて一酸化炭素チェッカーを設置して、アラームなどの動作確認を定期的に行うのが安心です。私もどちらかと言えば心配性なほうなので、最初のうちは夜中気になって起きてしまい、土間の臭いを嗅いだりしていました。

10年近く経過した今では換気のオンオフのバランスや着火の確実性も高まってきましたので、以前ほど失敗や不安はありません。それでも現在小学低学年の次男には、まだストーブの管理をさせるのは早いかなと思っています。困るのは冬場に学校から帰宅して一人で宿題などをさせて待たせる時です。先に述べた我が家、というか私だけの原理主義を捨てて、昨年ついにエアコンを設置したのは、猛暑対策もありますが、やはり次男のためだったのです。

※写真:1階にひとつだけですが、LAN機能内臓エアコンが付くと運用が変わります。

ところが、エアコンと薪ストーブの運用上の共存は、なかなか好都合だと気づきました。例えば最近のエアコンは、ネット経由でオンオフや各種設定ができるので、最も寒くなる時間帯や帰宅前にエアコンで予備的に暖房しておくと、薪ストーブで部屋を暖めやすいのです。本当に便利な時代になりました。もしかすると、薪ストーブもそのうちネットで着火・燃焼できるようになるかもしれませんね。

さて、運用面での細かなノウハウとしては、ほかに着火技術があります。最初の頃は、新聞紙なども併用していましたが、すぐに燃え尽きて灰がたまるだけでメリットはほとんどありません。やはり専用の着火剤と油分の多いスギの枝葉、そしてアカマツの薪割り時の破片(使い古しの割り箸も!)が最高の組み合わせです。それと重要なのは着火時にアウトドア用のバーナーを使うことに最近気付きました。特に写真のように下向きでも燃焼可能なタイプを使うと、着火剤と薪の接点をピンポイントで燃焼させることができます。カートリッジ1本で1シーズン保つのでコスト的にも優位です。

※写真:バーナーが下向きに使えると薪の間をピンポイントで燃やせる。

最後に、運用として最も重要なことをお伝えします。それは、薪が燃え尽きないように誰かが一定間隔で薪を投入しないといけないことです。本来、そういう手間を楽しみたかったし、もちろん実際に楽しんでますが、冬限定とはいえ毎日運用してみたら、いや事前に想像しても本来すぐわかることですが、そんな当たり前のことが正直かなり面倒な時もあるんです(笑)。

それはちょっと無理かも、でも炎を楽しむ生活を諦めたくないと思われる方には「ペレットストーブ」という選択肢もありますので調べてみてください。機能・効用的には石油ファンヒーターと薪ストーブのイイとこ取りで、お湯も沸かせますしペレットの種類を選べば地域や地球の自然環境にも貢献できるかもしれません。※写真:真ん中の薪が先に燃え尽きてしまい、それらを寄せて上に新たな薪を置くのがルーティンな作業。

そうそう、ペレットストーブのもうひとつの利点は、煙突の導入コストがかからないことと、その掃除がしやすいことなんですよね。ということで、次回は薪ストーブのメンテナンス、特に煙突の掃除を中心に我が家の取り組みをご紹介して、ノウハウ編を締めたいと思います。

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