【実践!里山生活術 】
Vol.29 風土を感じる酒肴(10)真冬の海の幸といえば蟹!

【実践!里山生活術 】


里山とは、環境省によれば「原生的な自然と都市との中間に位置し、集落とそれを取り巻く二次林、それらと混在する農地、ため池、草原などで構成される地域」。日本人の原風景が感じられる北広島町の里山で暮らす“里山コーディネータ”山場淳史さんのコラムです。

一年を通して最も寒くなる2月、厳しい天候で食材も限られてきます。そんな時期でも海の幸はむしろ一年で一番美味しい時期です。瀬戸内海側は間違いなく牡蠣ですね。では日本海側ではどうでしょう?最近は流通の発達もあり、広島の県北にも島根や鳥取から新鮮な魚介類がスーパーに届くようになりました。お刺身になりそうな脂の乗ったノドグロも最高ですが、特に華がある高級食材といえば蟹ですよね。※写真:よく見ると怒ったような勇ましい顔です。

里山暮らしと関連して馴染み深い蟹は、むしろ淡水系のモクズガニ(ツガニ,ケガニ)やサワガニ、あるいは河口付近でも獲れるワタリガニ(ガザミ)です。ただ、いずれも旬は夏か秋だし,私は全国有数の産地である福井に高校生まで暮らしていたので、冬の蟹といえば「ズワイガニ」一択なのです!もっとも仕出し料理に蟹酢でいただくズワイガニの刺身用の脚が一本付いていたことはあっても、一杯(匹)食べた記憶はありません(笑)。

ズワイガニは揚がる産地によって名称が異なるのも面白いですね。山陰のほうでは「松葉」,私の故郷の福井では「越前」という冠名が付きます。ただ、最近は各地のブランド化戦略もあって細分化が進んでいるようです。※写真:セコガニをこんなにたくさん買えた時代が懐かしい。

家族でいただく場合はもちろん仲間が集まる時にも、セコガニとかセイコガニとか呼ばれるメスを人数分仕入れることが多かったです。ところが、最近はメスの漁期が短縮されて12月いっぱいまでになり、単価も以前よりかなり高くなっているので難しくなりました。

ズワイガニの仲間のベニズワイガニもスーパーでよく見かけるようになりました。実は、この蟹は学名に「ジャポニカス」と付いていることからわかるように、日本海の限られた水域にしかいなくて和名も1950年に付けられたという面白い種です。大きなオスでも比較的値段も安いので、甘い身をたくさん食べたい時はそちらを選べるようになったのは嬉しいですね。※写真:ベニズワイガニのスーパーでの山盛り販売コーナー。

活きた蟹の調理のしかたは、我が家では基本的に酒蒸しです。以前オスの巨大なズワイガニを直送でいただいた際には、まず真水で締めてから塩茹でするという豪快な調理も経験したことがあります。それはそれで美味しかったのですが、蟹の旨味を逃すことなく味わうには酒蒸しが一番だと信じています。※写真:味噌汁が好きになったというのは加齢のせい?

最近、美味しいと知ったのは、セコガニをあえて味噌汁にするということですね。以前は蟹味噌や甲羅の外にある卵である外子が好きでしたが、そこまで執着することなく内子も含めてトータルの旨味を味わうほうが好みになりました。

ズワイガニに合わせるお酒はもちろん日本酒ですが,やはりこの時期は新酒ですね!個人的な好みとしては、味わいは深いものより淡いもので綺麗な酸味の余韻があるタイプが最高だと思います。広島のお酒ではなくて申し訳ない、福岡県の田中六十の季節限定生酒がよく合う気がします。※写真:広島市内だと胡町の大和屋酒舗さんで購入できますよ!

さて、この酒肴のテーマで本号がちょうど10号目。次号はいよいよ連載30号目となることから、一度区切りをしてみたいと考えています。この連載では、これまでの里山との関わりや、そこで暮らしを振り返る自分史的な内容でした。次の連載からは自分に鞭を打つつもりで、これから取り組みたいことを中心にまとめてみようと考えています。次号は、その見出しになるような内容にできればと思っていますので、引き続き、お付き合いよろしくお願いいたします。

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