【実践!里山生活術 】
Vol.28 風土を感じる酒肴(9)年末年始のお餅いろいろ

【実践!里山生活術 】


里山とは、環境省によれば「原生的な自然と都市との中間に位置し、集落とそれを取り巻く二次林、それらと混在する農地、ため池、草原などで構成される地域」。日本人の原風景が感じられる北広島町の里山で暮らす“里山コーディネータ”山場淳史さんのコラムです。

新年あけましておめでとうございます。久しぶりに本格的な雪景色の年末年始になりました。この時期に欠かせない地元の食材といえば、お餅ですね。ということで、本号では里山暮らしにまつわる、お餅の話題とその酒肴についてご紹介します。

まず、秋から年始の行事とお餅の関係について。地区の運動会や秋祭りの最後に例年行われるのは餅まきです。こちらの地域ですと、紅白の小さな丸餅を一つずつビニール袋に入れたものが地区の方々により多数準備されています。それらを一斉に高いところから撒くのです。※写真:地区の運動会の餅まき。あまり細かいことは言わないでくださいね。

まさに老若男女が入り乱れて取り合う様子は、なかなか見応えがあります(笑)。ただ、実際には大人が拾って子どもたちに渡してあげることが多いですね。嬉しそうに餅を抱えて帰ってくると、さっそく焼いて食べさせてあげます。

また、年始のお餅にまつわる行事といえば「とんど」です。広島にお住まいの方ならほとんどの方がご存知かと思います。広島方式としては、木材や青竹などで組んだ巨大なモニュメントに正月飾りや書初めを添えて一気に焼き上げる壮大なファイヤーとなります。※写真:我が地区のとんどの様子と餅を焼くアイテム。

竹が爆発しながら炎が高く上がる様子は、見慣れていてもワクワクしますね。そして、それらが一通り落ち着いた後に、割った鏡餅をその熾火で焼いて食べると無病息災で一年を過ごせるとのこと。それぞれの家の流儀で焼きながら、またお酒などを持ち寄って温めながら談笑するのは本当に楽しいものです。

里山地域ですと、餅米も自家製という家が少なくないです。しかも昔ながらの焚き火で蒸し、皆で回しついて作る餅は、たいへん風情があります。実は我が地区で、そうした餅づくりを毎年続けておられる農家さんのお友達がいて、そのタイミングでの集まりに家族で参加させていただくのが正月の楽しみなんです。※写真:昔ながらの餅づくりの道具一式。

お正月の特別な食材やお酒を持ち寄って分け合いながらワイワイと餅づくり。モチろん、石臼と杵で餅をつきます。我が家の兄弟も参加させていただき、良い思い出となっています。そうしたイベントがコロナ禍で、ここ数年実施できていなくて本当に残念です。※写真:皆で交代しながらつく餅の楽しく美味しいこと。

さて、年始にお酒と一緒にいただくお餅料理といえば、やっぱり「お雑煮」ですよね。その頃、SNSなんかでもよく話題になるのが、そのスタイルの多様性。ベースとなる出汁、具の種類、餅の形や処理方法などで日本各地のバリエーションがあって、まさに風土そのものです。

我が家の場合、私が福井、妻が広島の出身ですので、両方のスタイルを使い分けます。広島といっても、その中でさらに異なるかもしれませんが、澄んだ出汁に鶏肉や根野菜が入る感じですね。※写真:福井風のお雑煮はあまり見たことない方が多いと思うので2種アレンジ。

一方で、福井でもどちらかというと関西方面の文化が強い地域だったからか、味噌出汁に具は蕪と鰹節だけという極めてシンプルなものになります。広島とは正反対な見た目ですが、どちらも焼かない丸餅なので、とりあえず喧嘩にはなりません。

合わせるお酒は、やはりお正月なので特別な日本酒をいただきたいですね。今シーズンは、福井の地元に近い有名吟醸蔵で、我が家でも愛飲している黒龍酒造の純米大吟醸生原酒干支ラベルを取り寄せています。※写真:ちょっと高価な黒龍なので、未開封のまま箱の写真でお許しを!

さて、次回は冬の海の幸,蟹はいかがでしょうか。我が家では、活きたズワイガニを見つけたら迷わず「蒸し」でいただきます。美味しい写真をどうぞご期待ください。

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