【実践!里山生活術 】
Vol.11 「家づくり」と「木づかい」

【実践!里山生活術 】


里山とは、環境省によれば「原生的な自然と都市との中間に位置し、集落とそれを取り巻く二次林、それらと混在する農地、ため池、草原などで構成される地域」。日本人の原風景が感じられる北広島町の里山で暮らす“里山コーディネータ”山場淳史さんのコラムです。

里山での住まいかたとして、前回も触れたとおり、もともと当地にある古民家等にそのまま、あるいはそれを改築して居住する方法と、土地を購入して家を新築する方法に大きく分かれます。今回からは、後者を選んだ我が家での理想の「家づくり」の過程をご紹介しながら、ライフスタイルとして「木」とどのように向き合うかという意味での「木づかい」もテーマに加えて、まとめてみようと思います。

ところで、家と木との関係について簡単に整理しておきましょう。一般的な構造のいわゆる戸建て住宅の8割は木造と言われていますが、住宅の建設費に占める「木材」費の割合ってどれくらいか考えたことはありますか?実は10〜20%だそうです。これが高いか低いかはそれぞれの判断ですが、私の感覚では、家の構造や内外装に大きく影響する材料なのに、意外に費用をかけていないんだなと最初調べた時は驚きました。

では、戸建て住宅に使われる木材のうち、「国産」の材料はどれくらいの割合でしょうか。調べかたで結果も異なるので、いろいろな数値がありますが、(一社)日本木造住宅産業協会の平成29年度の調査報告(3年に一回の調査なので最新の報告)では、住宅全体の国産材使用比率(材積換算)は45.4%だったそうです。最近、国や県等で国(県)産材利用促進の取り組みが強化されていることもあり、その比率は増加傾向にありますが、それでも半分くらいは国産でない、つまり外国から輸入された木材(以降、外材と呼びます)を住宅に使っているということですね。※写真は県産材利用促進関係事業を利用している住宅建築。

もちろん、家族の生活の実態や価値観など、様々な事情が反映されますので、住宅建築に木材をどれくらい、どのように使うかということについて正解はありません。あくまで我が家の場合ですが、これまで触れてきたとおり、里山に暮らすという理想を現実とするに当たって、家を建てるなら少なくとも使用する木材は「なるべく」身近なところから伐られ、運ばれ、加工された木材(以降、地域材と呼びます)がいいよね、という価値観がありました。

なぜかというと、後述のとおり、個人的なこだわりもいろいろあるのですが、最も端的に表現すれば、環境への負荷を少なく、かつ地域経済にも貢献したい、ということでしょうか。もちろん現実とのギャップも多々ありますが、少なくとも外材ではなく地域材をなるべく使用することで、輸送によるエネルギーの消費を減らし、木材そのものや、その加工への対価が身近な経済に還元される、そうした傾向になることは間違いないと思うのです。

とはいえ、だからと言って国(県)産材,地域材をふんだんに使ったら、外材よりも単価が高いから先の建設費に占める木材費の割合が上がって結果的にコスト増になるじゃないか、そもそも地域材なんてどこで手に入るの?品質性能が劣るのでは?というご指摘もあるでしょう。もちろん、そういう側面は否定しませんし,我が家も経済的に余裕はなかったので、後述するように結果的には外材とのハイブリッドになったことから、「なるべく」という表現に逃げているわけです(笑)。

ただ、一般的な住宅の構造材(梁桁材)は、近年は無垢材よりも集成材という断面寸法の小さい木材を接着して作られる品質は安定しているけれども、製造コストがかかる材料が使用されることが多くなっていて、外材との価格・性能差はむしろ少なくなっています。さらに、ここ最近の外材の急減・急騰、いわゆる「ウッドショック」によって外材依存と国産材供給のリスクが取り沙汰されていることも、住宅建築を考えている方にとっては切実な問題なので、ぜひご自身で調べて検討してみてください。※写真は集成材による構造の例:斜めに天井を支えている縞模様の木材です。

ということで例に漏れず、前置きが長くなってしまいましたが、9年前に建築した我が家の住宅「地松の香る家」の実績からご紹介しましょう。設計・施工は地元の工務店、有限会社八重製材所です。完成写真は現在も同社のウェブサイトで公開されています。(https://www.yaeseizai.jp/sekourei/1780.html)これを引用すると次のとおりです。「まず外観は焼き杉から始まり、玄関を開けると10畳ほどの土間にこだわりの信州唐松ストーブが出迎えてくれる。そして天井を見上げると、こだわりの地松。冬期に伐採し、お施主様が自ら足を運んで選び抜いた美しい地松がこの家の表情を豊かにしてくれる」。※写真は完成時の「地松の香る家」内部をプロが撮った写真)

木材については、解説のとおり、室内外から見える部材(柱、梁桁、母屋、垂木、土間吹き抜けの筋交)と1階フローリングは全て地元北広島町を中心とした西中国山地で伐採されたアカマツ無垢材(製材・乾燥・加工は島根県大田市の有限会社石東林業商会)を使用しました。特に地元産アカマツにこだわったことに関しては、本コラムを継続して読んでくださっている方には、その意図をご理解いただけるでしょう。初めて読んでくださっている方には、お手数ですが併せてvol. 5前後あたりを読んでいただけると幸いです。

こうした地松を家づくりの中心に採用するために、まずは材料探しでとても魅力的な出会いがありました。また、工務店さんにはいろいろと課題をクリアしながら我々の夢を実現していただきました。次回は、その過程を詳しくご紹介したいと思います。

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