【おばDの映像玉手箱 】
Vol.1 ドライブ・マイ・カー

【おばDの映像玉手箱 】


広島・岡山の制作会社やテレビ局のディレクターとして様々な映像制作を経験。フリーランスの映像クリエイター「おばD」こと川内美佳さんが、クリエイティブな日々で見つけた話題を綴ります。

こんにちは、初めまして。映像クリエイターの「おばD」と申します。オバQではありません。つい最近まで、テレビ番組のディレクターをやっていました。

ここ数年で、テレビは地上波以外にYouTubeやNetflixにAbemaTV…と凄いことになっていますよね。一般の方もAdobeのソフトを使いこなして映像作品をバンバン作る世の中。こんな世の中になるとは、思ってなかったなあ〜。私が映像の世界に入った頃は、映像を作る人って変人しかいませんでした(笑)

ところで、昔からテレビ番組を作っている人の名刺には、「番組ディレクター」と書かれておりました。私の名刺もずっとそうでしたが、最近「映像クリエイター」に変えました。その方がかっこいいから。でも、おばさんですからね〜。なんせ。

映像クリエイターとおばさんって、めっちゃ遠い所にいませんか?南極と北極、月とスッポン、ブタと真珠…対極と言ってもいいんじゃないでしょうか?初めてお会いした方には、「少年の心を持ったおばさんです」と自己紹介させていただいています。理由は、おいおい書いていこうと思います。

さて、第1回に何を書こうかな〜と考えていたら、ちょうどある映画がアカデミー賞で脚本賞を取りました。そう「ドライブ・マイ・カー」です。

久しぶりに映画館で映画でも観ようかな〜と、思った理由は2つあります。1つめ。この映画のロケ地が広島だということ。いつも見ている広島の風景が、どのように切り取られているのか?それが私の中のオタク心を刺激しました。さらに、ロケ地の中に、私が広島で一番好きな場所がありまして。

その場所とは、広島市環境局中工場、通称「エコリアム」です。ゴミ処理施設なのですが、その施設自体を、まるで近代アートのように切り取って見せていて、初めて見た時、マジで衝撃を受けました。広島にこんな凄い場所があったのか!と。「ゴミ処理場をアートにする」それは、まるで映像クリエイターとおばさんが対極にいる様なもんです。

実はこのエコリアム、3年前に、私も某テレビ局で「美しすぎるゴミ処理場」として紹介した思い出の場所。映画の中では、ドライバーとして登場する“みさき”さんのお気に入りの場所として紹介されます。すごく美しくて映える場所ですが、映画の中ではその佇まいは強調されることなく、あくまで役者の演技の背景として、さっぱりと使われていたのが、すごくいいなと思いました。

2つ目は、ロードムービー好きだから。決して西島秀俊が出ているからではありません⁉世代的に、アメリカン・ニューシネマとかその後のタランティーノ、ジム・ジャームッシュとかに影響を受けているので。しかも、当時(※80年代後半)は村上春樹が「ノルウェイの森」で一躍有名になった頃と重なっており、「村上春樹の原作で、ロードムービーってどんなん?」って勝手に想像して観に行きました。映画を観る時は、絶対に初見で観たいので、いわゆるネタバレに注意を怠らず。で、観てみたらこれはロードムービーじゃないな!

原作も読んでみましたが、骨格は残っているものの、全く違うものになっているんですよね。人って、なぜ映画を観るんだろう?って考えた時に、私は「映画の中で、違う人生を生きられるから」じゃないかと思ってるんですけど。「映画を観た」ではなく「主人公の生涯の分岐点に立ち会った」という印象でした。

演技自体も、そこに流れている時間も、すごく自然で、3時間もある長い映画なのに、全く長く感じませんでした。その自然さを色々な仕掛けで演出しているのが、この脚本だと思います。しかし、日本車じゃなくて、サーブを使うあたりが、やっぱり村上春樹の原作だなーと思いました。実は、そこまで村上春樹読んで無いんですけどね。
久しぶりに映画館で、一人で映画を観ましたが、ちょっとハマりそうです。写真は、映画を見た福山のミニシアター、福山駅前シネマモードです。

最近の若い人は、ドラマとか映画を倍速で観るそうですが、それが単に時間の節約の為だけでなく、感動して涙を流したり、ハラハラドキドキするのが疲れるからだ、という記事を読みました。映像作る方からしたらがっかりするんで、等倍で観てください。そして、心を動かしましょう!おばDからのお願いでした。次回は何を書こうかな…それでは、また。

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