【暮楽人(くらうど)の住まい学 】
Vol.6 「セルフメイド」

【暮楽人(くらうど)の住まい学 】


リフォーム・リノベーション・新築・不動産のプロフェッショナル、マエダハウジング㈱の前田政登己社長が快適な住まいとライフスタイルを提案します。

年末の日経新聞に建築家隈研吾さんの「セルフメイドの空間」という記事が出ていました。大変興味を抱いたので一部引用させていただきます。

「コロナは建築の長い歴史の中で折り返し地点となる。いや、折り返し地点にしなければならない。建築の歴史は狩猟民族の時代から『集中へ』ということで集まって定住し、箱の中に詰め込まれて仕事をしていた。それは『都市化』であり『高層化』であった。行きつく先は高層オフィスビルで、それ自身がヒエラルキーの上位にいることに疑わなかった。

しかし、集中が心身ともにいかにストレスを与えていたか、コロナが気づかせてくれた。『分散』への大逆転を踏み出した。分散はセルフメイドに繋がり、コンクリートや鉄という扱いにくい素材でできた都市から脱出。すると日本の田舎はもっと楽しくなり、風通しが良くなる。それが2020年最大の収穫である」(隈研吾2020)

長い歴史の中で集中することが当たり前で、それこそが文化や経済の発展と疑いませんでした。確かにコンクリートの箱の中でずっといると息が詰まりそうで、それよりも大自然の中で青空や青い海を見ている方が気持ちいいでしょう。

コロナによって「ワーケーション」という働き方が出てきました。「ワーク」と「バケーション」の造語です。観光地やリゾートでリモートワークするという働き方です。オフィスでなくても仕事ができる時代になってきました。

東京ではオフィス不要論が叫ばれ、解約が出てきています。人材派遣のパソナグループは本社を淡路島に移転して1200人が移動する予定です。弊社もコロナによってテレワークを実施しています。緊急事態宣言下では出社比率を下げるためでしたが、本来の目的は「ワークライフバランスの実現」と「生産性向上」です。今では多くの社員がトライして新たな働き方を模索しています。

2000年前半ごろから「コンパクトシティ」という言葉が出てきました。1990年代より市街地の空洞化現象がおき、商業施設や大病院が郊外に移転する傾向が見られました。旧市街地は道路整備が不十分で救急車が通れなかったり、戦後無秩序に家が建てられている場所もありました。

広島には山を造成した築30~40年の団地がありますが、一斉に高齢化していくため、スーパーが減り、バスの便数が減り、徐々に住人が減っています。最近、人気の「ポツンと一軒家」のように山間部に立っている家では、たとえ人が少ない場所でも住んでいる限りは水道、電気などのインフラが必要です。

例え、人が減っても家があれば一定のインフラ維持に費用が掛かるため、コンパクトに集まって暮らそうという考えです。経済性から見たらまさしくその通りとは思いますが、今この「集中」がコロナによって考えさせられることとなりました。

「分散はセルフメイドに繋がる」ということですが、単にDIYという意味ではなく、「自分の空間を作る」という意味では、コロナによってマイホームの中に書斎やワークスペース、防音スペースを作る人が出てきました。

退職前後で郊外の一軒家を買う人が出てきました。金額も500万以下と手ごろな価格で週末の趣味や畑を楽しむような使い方です。セカンドハウスとして中古マンションを購入して趣味で使っている方もいます。

わが家も最近は毎日家で食事を作っており、料理に凝るようになってきました。以前は外食や買ってきた方が早くて経済的かもしれませんが、さすがに今の状況では難しく作るようになって、新たな楽しさもできました。

ただ、便利なだけでなく、経済的なだけでなく、人間らしさを考えた時に、ふと立ち止まって考えるタイミングなのかもしれません。それをコロナが教えてくれたのでしょう。隈さんのスタッフは、紙漉の技を習得し酒蔵に使う和紙を自ら漉き現場に使うようにしたようです。セルフメイドによって建築も生活ももっと楽しくなるような気がします。

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