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【暮楽人(くらうど)の住まい学 】
Vol.4 住宅の断熱と健康の関係について

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【暮楽人(くらうど)の住まい学 】


リフォーム・リノベーション・新築・不動産のプロフェッショナル、マエダハウジング㈱の前田政登己社長が快適な住まいとライフスタイルを提案します。

ニュースでは毎日のように悲しい交通事故の報道がされています。しかし、交通事故死よりも圧倒的に多いのが家庭内事故死。家庭内事故死者は交通事故死者数3,215人(警視庁2019)の5倍の約17,000人(東京都健康長寿医療センター2013)いると言われ、その大半が、ヒートショックが原因です。

ヒートショックとは、急激な温度変化で体がダメージを受けることです。浴室とトイレは比較的北側にあることが多く、冬場に暖かいリビングから寒い浴室へ移動すると、血管が縮み血圧が上がります。

浴室ビフォー

リビングが25℃でも廊下、洗面室が10℃以下で服を脱ぐと血圧が上がり、湯船につかると逆に血管が広がって血圧が下がり、意識が薄れ浴槽で溺死するという事故で、高齢者に増えており今年、野村監督も同様の事故で亡くなられました。寒いトイレも同じで、血圧の変動は心臓に負担をかけ心筋梗塞や脳卒中に繋がりかねません。

ヒートショックは、夏よりも冬が8倍以上発生しており、冬の寒さが危険であることはよく知られています。アメリカではセントラル空調のためヒートショックは少なく、日本は世界的に見ても多い国です。特に高齢者が住んでいる古い戸建ての断熱対策ができておらず、対策が必要です。

私の家内の実家も高齢の両親が住んでおり、築35年で目の前に海が見える団地にありますが、冬場とても寒い家でした。断熱リノベーションを行い、今では非常に暖かい家に生まれ変わりました。

断熱材工事

発生県別でみると、高齢者1万人当たりで最も多い県は香川県で、最も少ない県の2番目が北海道です(東京都健康長寿医療センター研究所2016)。このことから、外気温の寒さだけでなく、住宅の断熱性能が大きく関わっていると言えます。

冬の室内の暖かい空気の58%は窓から逃げ、夏の暑さの73%は窓から侵入します。そのため、窓の断熱化が一番効果があります。しかし、世界的に見て日本の窓は断熱がかなり遅れており、ガラスはダブル、トリプルと進化はしていますが、いまだにアルミサッシが主流です。

日本の伝統的家屋は夏を旨とし、断熱よりも風通しを重視して作られてきた歴史風土もありますが、高度経済成長期にハウスメーカーが木製主流だったものを大量生産しやすいアルミに変えていった経緯があります。

樹脂サッシトリプルガラス窓

アルミの熱伝導率は、銀、銅、金に次いで4番目に高く、いくらガラスが結露しなくてもアルミサッシ自体が結露することがあります。それに比べ、樹脂はアルミの1/1000であり、世界的に見てもアルミサッシ主流派は日本くらいで、海外は樹脂サッシ、木製サッシが中心となっています。アメリカでは24州がアルミサッシの使用を禁止していると言われています。

昨年、私は「断熱性能と健康の関係」の研究している第一人者である近畿大学の岩前教授のところにお伺いしました。岩前教授の研究によると、2012年以降約35,000人の健康調査で高断熱高気密住宅に引っ越した30~40代の夫婦と子供を追跡した調査では、咳やのどの痛み、アトピー性皮膚炎など15の症状が改善したということです。

特に省エネ等級4以上の断熱性の高い住宅へ引っ越した人ほど改善率が高くなっており、現在は10万人を超えていますが、ほぼ同じ調査結果となっています。2017年度の医療費が4.2兆円あり、日本の人口1億2,600万人で割ると一人当たり年間33.5万円です。これをいかに削減するかが課題です。

ストック住宅の中には、いまだ無断熱の住宅が4割あり、1999年基準以下の断熱レベルで言えば95%がいまだ低い基準となっています(国土交通省2012)。国土交通省は2013年度から長期優良住宅リフォーム推移新事業をスタートしています。性能向上を施す住宅に対し新築と同程度のS基準まで性能向上すれば一戸当たり200万円、A基準であれば100万円を補助しています。

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私は県立広島大学大学院経営管理学科(HBMS)通学中に耐震断熱性能向上リノベーションを研究し、YKKAPさんと共に性能向上リノベーションモデルハウス「三入の家」を作りました。断熱性能を「HEAT20 G2レベル」という当時で最高の断熱性能にリフォームでチャレンジしました。長期優良住宅補助金も「高度省エネルギー型」最大250万の認定も受けました。

主な例暖房器具はエアコンであり、年間のエアコン冷暖房費は49,767円と56%削減の計算結果となりました。経済性も重要ですが、やはり家庭内事故死を一人でもなくすためにも既存住宅の断熱性能を上げていきたいと考えています。ぜひ、モデルハウスを体験してみてください。

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