【カメラマンかく語りき 】
Vol.3 未知との遭遇?!

【カメラマンかく語りき 】


呉市在住。グラフィックデザイナーを経て家業のカメラ店を継ぎ、現在は地元におけるドローン撮影の第一人者としても幅広く活躍中のプロカメラマン石田伸二氏の楽しいコラムです

今の時代、自分のカメラを持ってる言うとあまり珍しくもない話ですが、戦後から高度成長期時時代にカメラを持ってるって言うだけで「お金持ちの趣味、嗜好品と言うくらいに高級品」と、父から聞きました。

僕の実家は、国産機や舶来機などの高級カメラも取り扱うカメラ店だったので、中学生の時に入ってた写真クラブで使う自分のカメラは父親が使ってたニコンFやF3を勝手に持ち出していた。当然、そのカメラの価値など知らずに使ってたけど、当時の担任からしたら高級機を適当に使う生意気な学生だったと思う。

高校生になってからはクラブ活動も体育系に変わったけど、趣味となった写真はゆるーく続けて、店の奥にあった暗室に籠っては町のスナップを撮った写真を焼いてた。

マニュアルカメラがこれまで普通だった時代、僕が高校2年の時に発売されたピントが自動的に合う世界初のオートフォーカスカメラ “ミノルタα7000”。「まさに未知との遭遇!未来のカメラ任せの時代に突入だ‼」高校生の僕はすぐにその魔力に取り憑かれた。

でも、うちの店に来てた常連のおじさんたちの評価は、その期待値とは裏腹に「こんな自動ピントなんか信用できん!」「マニュアルでないとカメラでない!」など、否定的な意見が目立ったが、それ以後、発売される各メーカーのカメラも徐々にオートフォーカス化が進み、あんなに文句ばっか言ってたカメラオタクおじさんも「老眼でも使えるから楽だわ!」とか言ってるのを、いち早くハイテクカメラにゾッコンだった僕が店の休憩室で「ウンウン、そうじゃろ。今頃気づいたか、おっさんよ」と呟いてたりしてね。

話はいきなり現代に飛んで2020年9月、国立科学博物館が今年度の「未来技術遺産」(重要科学技術史資料)に、革新的な一眼レフカメラの先駆けとなったα7000など16件を新たに登録すると発表した。このニュースをラジオで聞いた時、時代の変わり目に自分が立ち会えたような気持ちになり、α7000開発者でもなんでもないのに「マジか…」と呟き、身震いしてしまった。

2020年以降、カメラはどんどん小型高画質化していき、4K、8K、16Kなど異次元の画質に突入していくのは間違いないけど、果たしてミノルタα7000の時のような時代に超インパクト与える技術が詰まったカメラが出るのか…?ミノルタα7000から始まった僕のハイテクガジェット好きが、今一番興味を持ってるのは、自分と同じ年に生産されたオリンパスPENなどのフィルムカメラだったりする。

「なんでアナログなんや!」っていうオチも面白くもなんともないが、頭が良くて出来すぎるヤツより手間がかかる少しアホな子のほうが可愛げがあるって思うのと同じ心理かな。仕事では最新デジタル機材、プライベートはアナログ機材。良い仕事をするということは息抜きが大事で実はとても大事だと思う。

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