「事件は“会議室”で起きてるんじゃない!“現場”で起きてるんだ!!」かつて大ヒットした映画「踊る大捜査線 THE MOVIE」(1998年)の名セリフですね。
これ、実は僕が関わるプロの現場ではよくあるセリフ(そのままは言わないよ!)なんです。要は「絵コンテは絵コンテ」、それに近いものを撮るようには努力するが、現場判断でクリエイティブかつ、柔軟性を持ってより良いものを短時間で撮りきれるのがプロの仕事であるべき。
プロでもアマチュアでも写真の技法や撮影の出来栄えにこだわる人がいる。例に漏れず僕もその1人。いや、うそ。「写真に関してはそこまでのこだわりは無い」と、いつも答えている。
「え?こだわらないの?あなたプロなの…」。意外と思われるかもしれないけど、オタク的なこだわりは現場では必ずしも必要で無いと言う意味合い。つまり「これを撮るときは、この技法でこう撮ります」みたいな考えで、その場の雰囲気を無視したり、他の意見を聞かない頑固なカメラマンは現場では非常に使いづらい。
「そんな話を聞かない人いないでしょ?」って思うかもしれないが、カメラマンは変わり者が多いです(笑)。技法や知識はあるかもしれないけど、こだわりに縛られすぎて融通が利かない、ちゃんとしようとする気持ちは判るがセッティングに時間がかかる、その割に大したものが撮れていない、などなど。
例外として、動物系やドキュメンタリー系は何日も何時間もかけて、その一瞬を切り取るのが仕事なので、逆にこだわりは必要だったりする。ただ、通常の現場仕事となると“タイムイズマネー”なので、妥協は必ず必要になってくる。現場は常に動いています。時間はもちろん天気も大勢のスタッフも。
そんな現場で「この撮影ならこのやり方で撮った方がいいので時間ください」と言うのは、よほどで無い限りアウト。本当にそのこだわりは今のタイミングで必要? 本当に必要と判断したらもちろん時間が許すまで待ちますよ。こだわるって成果物の仕上がりに責任を持つってことだから、流れを止めてまでやり切るんだよね。
ここで間違えないでほしいのは、こだわりたいあまり「時間をかけたら良い」と言うことではなく、こだわりは大事だが、それをいかに的確に素早く判断してやりきれるかが大事。そこの判断が出来るのがプロなんです。機材は新しくなってアップデートされるけど、使う人の思考がアップデートされてない事があるからややこしい。そんなカメラマンが現場に入るとさらにややこしい。「機材の自慢はいいから、さっさと撮れよ!」と言いたいね。