【渓流を訪ねて 】
Vol.3 熊さんに会いたい?(前編)

【渓流を訪ねて 】


渓流釣り、海釣り、キャンプ、軽登山など、自然の中での「遊びの達人」がアウトドアの楽しみ方を指南します!

西中国山地には絶滅危惧種を含めた希少な生き物が生息する。オオササンショウウオ、クマタカ、カワネズミ、テンなどほんの一例。カワネズミは釣行中に見つけ、ブルーグレイでマリモを二つくっつけたような体型でクチバシがあるし、おとなしいし、何なのか分からず、とりあえず写真を撮って安佐動物園へ。園からは、「なぜ保護しなかったのか?弱っていたのですよ。絶滅危惧種の1種です」との解答。そもそも泳ぎが得意ですばっしっこいので目撃することは稀みたい。※写真はカワネズミ。

そして忘れてならないのが、ツキノワグマだ。初めて目撃したのは、確か20数年前、渓流釣りを始めた頃、真夏の暗くなる夕方6時過ぎぐらいだっただろうか?釣り道具を車に仕舞っていた時のことだ。最初は黒い大きな犬かと思ったが、よく見たら「あっ!熊だ!犬よりデカい!」。すぐに車に乗り込んだら、熊は道路を渡りゆっくりと山へと消えていった。芸北のよく通っていた渓流なのだが、そのあとすぐにそこが頻繁に出没するエリアということが分かった。そして、なぜか異常に興味を持った。

それから20数年が過ぎ、毎年釣り仲間や住民から数々の目撃情報は聞くのに残念ながら自分は出会ったためしがない。その間、山や川に300回以上は通っているのに…。「なぜ、そんなに熊さんに出会いたいの?」とよく聞かれるが、どう応えたらいいだろうか?「至近距離や出会い頭でなければ、是非もう一度お会いしたいです」とでも応えとくか(笑)。※写真はツキノワグマ(剥製)。

昨年はコロナ禍でキャンパーが一気に増えた。釣り師も増えた。キャンプ用品店はもちろん、キャンプ場も予約でいっぱい。今までは思い立ってキャンプ場へというパターンが多かったが、もうそういう訳にはいかなくなった。普通のキャンプも諦め、渓流も思うように通えないまま、シーズンが終わり、悶々とした日々を送っていた時に思い立った。「おおっ!野営をしよう。川のすぐそばで焚火しながら、ロマンチックに星を眺めて、美味い酒を一杯。野営地キャンプだー!!」。※写真はテン(剥製)。

というわけで早速行動。川は死ぬほど?知っているので、すぐに野営地のロケハンに走った。場所は言えないが、「渓流が目の前で山は紅葉しているし、テン場も(テントを張る場所のこと。業界用語?)フラットで最適!こりゃ最高じゃわい!」と思いながら、前々から一緒にキャンプに行こうと話していた友人を誘った。女こどもは要らない、おっさんキャンプだ!彼とのキャンプは初めてなので二人が何の武器をもっているか、何を持っていくか、など事前にミーティング。

「どんなとこですか?」「川は目の前じゃし、紅葉も」「最高じゃないですか」

「でも夜は寒いよねー」「そうですねー、ストーブ持って行きましょう」「薪は自分が広葉樹のええのを用意するわー」「なにを食べる?」「温かいものがええよねー」「酒は?」などなど、野営地でのキャンプの事前ミーティングは楽しくてしょうがない。

大体の準備の目途が立った時、彼がひとこと「秦泉寺さん、熊は出ないでしょうねー?」。

「大丈夫よー!」と返事をしたものの、そのあとは「ラジオ持っとる?」「持ってます」「電波拾えるかね?」「ランタンやライトもあるだけ持って行こう」「斧や鉈も」「爆竹持ってませんか?」「持っとる、持っとる、昔のじゃけど」などなど、熊対策のミーティングに変わって行った。そしてキャンプ当日を迎えた。野営地で何か起こったのか?もしかして熊さんに出会ったのか!?は「後編」に続く。

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