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Vol.2 「そ~だったのかンパニー」10周年の軌跡。株式会社TSSプロダクション制作部 八木太朗さん

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コロナ禍で世界中が混とんとする中、広島を舞台に目標や夢を掲げて頑張っている人がいます。様々な分野で活躍する“時の人”のインタビューをどうぞ!

中国地方の元気な会社の知られざる開発秘話や製造工程のウラ側、驚きのアイデア、サービスなどを紹介する人気番組「そ〜だったのかンパニー」(制作:テレビ新広島、FNS中国地方ブロックネットで放送中)。2012年4月の放送開始以来、まもなく10周年を迎える全国でも珍しいローカル制作による経済情報番組のプロデューサー兼チーフディレクターの八木太朗さんにお話を聞いてみた。

まずは、八木さんのプロフィールを。

1974年7月生まれ、滋賀県出身です。高校卒業後、大阪のデザイン専門学校に進み、アド(広告)デザインの勉強をしていました。専門学校を卒業して大阪の映像制作会社に就職したところ、その会社が関西テレビに出入りする制作プロダクションでCMと番組制作を行っていた関係から、テレビ番組の制作に携わることに。20歳から関西テレビの情報バラエティー番組のAD(アシスタントディレクター)として番組制作の現場に立ち、仕事に馴染んだ頃、知り合いのディレクターの方から「広島でやってみないか?」と声をかけられたんです。そのお誘いを受けて22歳の時に広島へ居を移し、TSSプロダクションに所属して仕事を開始しました。当時の朝の情報番組「どっこい!神田の日めくりテレビ」を皮切りに、現在放送中の「釣りごろつられごろ」、「ひろしま満点ママ‼」など、様々なジャンルの番組制作で経験を積んで今に至ります。

関西出身のご出身ですが、広島との接点は?

それまでは縁もゆかりもありません。ただ、海に面していない“海なし県”の滋賀県で生まれ育ち、海の近くで暮らしたことのないせいか広島の環境がとにかく新鮮でした。来広した当初は右も左もわからないし、何か人に聞こうにも知り合いがいないので、まずは自分の足で街を歩いてみようと思ったんです。市内のスーパーやショッピングモールを皮切りに、フェリーに乗って瀬戸内海の島々を巡ってみたり…いろいろ歩いてみると沢山の発見や出会いがありました。お酒も飲まないし、余暇はたまにゴルフに出かけるぐらい。これといって道楽のないわたしにとって“街歩き”はいまでも一番楽しい趣味だと言えますね。この街歩きで得た地域の情報や知識は、「そ~だったのかンパニー」然り、自分が番組作りをする上で大いに役立っています。

なるほど。さて「そ~だったのかンパニー」について教えてください。

中国地方には日本に、そして世界に誇れる「技術」や「商品」を生み出すモノづくり企業が沢山あります。番組は、中国5県元気発進プロジェクト「そ~だったのかンパニー」(提供:中国電力)として2012年春に放送開始しましたが、それまで地域の企業を取り上げる情報バラエティーは見当たらなかったんですよ。様々な技術やアイデアを持つ地元企業の思わず「そ~だったのか!」と納得してしまう社風や商品の紹介、開発エピソードを取り上げ、「ふだん日の当たらない企業にスポットライトを当てて、地域の魅力を再発見して発信していこう」というのがこの番組の目的でした。

街歩きしながら商品を見るのが大好きで、面白いものを見つけると「どこの会社が作ったのだろう?」、「どんな工夫があるのだろう?」などと、すぐに興味の湧いていたわたしが、やり甲斐を感じたのは言うまでもありません。チーフディレクターとして記念すべき第1回目の放送で取り上げたのはスーパーで商品を見かけて以来、ずっと気になっていたフリーズドライ食品の製造を行う福山市の「天野実業株式会社」(※2017年7月にアサヒグループ食品株式会社に吸収合併)です。第2回目以降は番組の総合演出に回りましたが、天野実業さんに関してはコンテンツの基本スタイルを作るため、わたしが企画から取材、編集までひととおり全部やってみました。嬉しいことに第1回目から視聴率も2桁に乗り、好調な船出となりました。

全国区の知名度を持つ人気俳優、八嶋智人さんを司会に起用されたのも番組成功の要因ですね。

番組の顔となるMC(司会者)については、企画段階でネームバリューがあることや、スケジュールが押さえられるか?が人選の課題となります。当時、八嶋さんは、俳優として「HERO」など多くの人気ドラマや映画、舞台で活躍される一方、雑学バラエティー番組「トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜」にも出演されており、この上ない適任者でしたが、多忙なスケジュールを押さえる点が問題でした。“ダメもと”で東京の事務所に出演交渉に出かけたところ、たまたま次のスケジュールが空いている時期だったんです。「日の当たらないところで頑張っている中国地方の人たちの声を代弁して欲しい」と八嶋さんに力説したところ、「役者の仕事では会えない人と出会えることに興味がある」と引き受けていただけることになりました。

八嶋さんはローカル局の仕事は初めてだったらしく、当初は不安もあったと思いますが、ご自身も大学の哲学科を卒業されており、もともと人やものづくりの思考などに関心を持たれていたご様子。知的好奇心も旺盛で、収録には常に前向きに取り組んでくださっています。また、この番組に関わって広島のことが大好きになったようで、広島が舞台の映画に出演されたり、「そ~だったのかンパニーで紹介した会社を東京で見かけて嬉しかった」と広島へ思い入れを語っていただけるので、わたしたちとしても一体感を感じますね。俳優としてインタビューを受けられた際に「八嶋さんの人生のおすすめグルメ商品は?」という質問を受けて、番組でも紹介した広島の会社が作るお菓子を挙げられるなど、この人の“広島愛”は本物です!ただ、放送が始まった頃から、俳優の仕事がどんどん増えていったのでスケジュールを調整するのにいつも苦労しておりますが…。

放送開始からまもなく10周年ですが、番組作りで苦労されたことは?

今年4月からは放送11年目に突入するので、番組で紹介してきた企業の数ももうすぐ450社となり、2022年度中には500社を超えます。いつの間にか長い歴史となりましたが、一番の苦労と言えば、視聴者に企業をどう見せるか?これにつきますね。特にB to B(※Business to Business=企業間取引)を視聴者にわかりやすく、どう伝えるかが難しい。何しろ相手は業種ごとに、その道のプロである企業のみなさんです。スタッフもある程度の知識を短期間で勉強して理解しておかなければ、まず取材ができません。その労力の積み重ねが番組を支えています。

嬉しかったことや面白いエピソードがあればお聞かせください。

番組をやってきて良かったと感じるのは、登場していただいた会社の方の感想を聞いた時ですね。例えば、従業員さんの「職場がテレビでじっくり紹介されて、自分がどんな仕事をしているのか家族に理解してもらえた」といった声や、社長さんたちの「従業員の家族にお父さんやご主人が勤めているのは“こんな会社だったんだ”と安心してもらうことができた」とか「うちが何の仕事をやっているのか、ご存知なかった近所のみなさんに会社のことをわかってもらえた」など。ふだんは知られていない会社の様子を発信することで、紹介した先に「そ~だったのかンパニーに出て良かった」と思っていただけるのが作り手としては何より喜ばしいことです。

面白いエピソードと言えば、個人的に山口へ出かけて買い物をしていると、お店の方に声をかけられ、「これ、すごく美味しいんですよ。テレビでも取り上げられて大人気だから食べてみて!」と商品を勧められました。よく見たら、なんと自分もよく知っている商品だったので「どの番組で取り上げられたのですか?」と聞いてみたところ…案の定、わたしたちの番組でした。その店員さんも接客している相手が、まさか番組を作った人間だとは知るはずもなく、当り前のセールストークではありますが、自分の仕事がお役に立てているようで、なんだか嬉しくなりましたね。

ところで、10年間も放送が続くと、既に出演された企業も多いので、取り上げる先を探すのも大変でしょう。

800万人が暮らす中国地方には20万社の企業があるので、掘り下げていけば、まだまだ紹介できるカンパニーはあると思います。ただ、1社を題材に30分間の番組を作るのはなかなか至難の業で、それだけの特色を備えた会社に出会うのに苦心していますね。ちなみに制作作業で、特に重要になるのが、取材した会社の魅力を30分間で視聴者に伝えるためのストーリーを紡ぎ出すこと。わたしたちがストーリーを紡ぎ出す力を持てれば持てるほど、番組は続いていくと考えています。

一方、新型コロナウィルスの発生により、一昨年からは取材先にお伺いしたり、ロケに出かけにくい状況が続いています。苦しい思いをされている中国地方の企業のみなさんをわれわれの番組で紹介してバックアップしたいのですが、「番組への出演オファーを受けたいけれど、いまは控えたい」という取材先も少なくありません。そこでスタートさせたのが「あれからど~なったのかンパニー」というコーナーです。過去出演された企業に番組放送以降の出来事や変化をおたずねする企画で、コロナ禍を反映して“ビデオレター”のスタイルで登場いただいています。一度、番組で紹介した企業に再登場していただけるとあって好評なんですよ。災い転じて…ではありませんが、コロナと同時に加速した企画となりました。

番組は今春から11年目に突入しますが、八木さんがこれからやってみたい企画や試みなどあれば教えてください。

2022年度中に迎える放送500回に向けて、計画していることはいくつかあります。ひとつは、MCの八嶋さんがスタジオを飛び出して企業にお邪魔する企画です。番組では、これまで取材した会社の社長さんや担当者の方をスタジオにお招きしていましたが、時には八嶋さんの方から企業の現場を訪問すれば、彼の目線でひと味違う紹介が出来るはず。コロナが落ち着いたら、ぜひ実現したいですね。

もうひとつは10年間番組制作に携わって中国地方の多くの企業と育んできた“つながり”を活かすこと。わたしたちは「そ~だったのかンパニー」を通じて様々な業種やそこに従事される方に出会って生の声を聞き、沢山の気づきがありました。この気づきをビジネスマッチングなどの形で共有できるように役立てて、企業のみなさんのお力になれることがないか?現在、模索しているところです。

コロナによる厳しい状況はもう少し続きそうですが、番組を応援してくださる企業や視聴者の声にお応えするためにも引き続き、スタッフ一同、全力で頑張ります。まずは毎週の放送をお楽しみください!

●プロフィール

●八木太朗(やぎ たろう)
株式会社TSSプロダクション
制作部 制作グループ プロデューサー/ディレクター 
 

1974年7月19日生まれ、滋賀県出身。
デザイン系専門学校を卒業後、大阪の映像制作会社に就職。CMや番組の制作を行う。22歳でTSSプロダクションに所属。情報番組や釣り番組などを担当、2012年にテレビ新広島放送 中国5県元気発進プロジェクト「そ~だったのかンパニー」(提供:中国電力)を立ち上げ現在に至る。趣味は街歩きとゴルフ。

【TSSプロダクション】
http://www.tss-pro.co.jp/

■そ~だったのかンパニー
http://www.tss-tv.co.jp/soda/
毎週日曜日 9:30 – 10:00(テレビ山口のみ土曜16:54 – 17:24)

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