【トピックス 】
Vol.1 小児科と児童精神科を併設した診療施設
「奏音こどものこころクリニック」オープン

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新型コロナウィルスの感染拡大に、記録的な大雨や危険と警告されるほどの猛暑が追い打ちをかけ、暗いニュースばかりが続いたこの夏、先行き不安な社会に希望の光を灯しそうな診療施設が広島で産声をあげた。発達障がい児の療育支援を目的とする児童デイサービス事業所や訪問看護ステーションを経営する株式会社奏音(=かのん= 代表取締役 森川敦子)が、8月1日にオープンした小児科と児童精神科を併設した診療施設「奏音こどものこころクリニック」(広島市中区白島中町2-2-2F)である。

奏音は2010年に設立。作業を通して身体と心のリハビリを行う専門職「作業療法士」であり、4人の子どもの母親でもある森川社長が「自分の末子が発達障害の診断を受けたことを機に、多くの子供たちが療育の場を必要としているのに充分に数が足りておらず、待機者が溢れかえっている現実を知りました。当事者の保護者としても専門職である自分が療育の場を作っていこう」との思いでスタートした。

現在は、発達障がい児をマンツーマンで療育する通所支援事業所施設を広島市内4ヵ所、ニートや引きこもりを対象に訪問介護するリハビリステーションを1ヵ所で展開中。社名に相応しい「どれみ」「ふぁそら」「しどれ」といった長音階の可愛い屋号の「発達支援ルーム」と名付けられた施設の看板を目された方も多いだろう。

設立以来、独自の療育カリキュラムが評判を呼び、着実に実績を積み重ねているが、「発達障がい児の精神面のケアを重視して療育を行う診療施設は、まだ極端に少ないのが現状です。広島の場合、広島大学病院や舟入病院などの医療機関には開設されているものの、受診は半年待ちが当たり前なんです。この状況を改善するため、以前から療育機能を備えた新しい施設を開設したいと願ってきました」と森川社長。この思いを具現化したのが「奏音こどものこころクリニック」である。

医療法人社団芳誠会(本部=静岡)とタイアップして開設する新施設の特長は、小児科(川野辺令恵医師※同施設院長)と児童精神科(上領直子医師)の2人の経験豊富な専門医を配備すること。「子どもの発達に少し不安がある」場合は小児科から、「子どもの育ちに不安を抱えて悩んでいる」場合は児童精神科からと、発達障がい児を抱える保護者の心情にあった診療を選択できるのが大きな強味だ。発達障がい児の身体と心を診療する専門医を揃えた施設は、広島はもとより全国的にも稀なケースとなる。クリニックの対象年齢は0歳~19歳(初診時)で、成人後も25歳までは診療を継続する予定。なお建物の2階には同社5ヵ所目の通所支援事業所となる「発達支援ルーム らしど」を併設し、相互の機能を連携させていく方針だ。

コロナ禍に伴う輸入貿易規制で施設の改装に使用する建築資材の調達ができず、予定よりも1ヵ月遅れのオープンとなったが、「奏音が創業以来、目指してきた特性ある子供たちへの“切れ目のない支援”と“手厚い医療・福祉を届けたい”という想いを、2人の医師の先生方とのご縁でまたひとつ形にすることができました」と森川社長の表情は明るい。ちなみに今回の施設の開設を発表した時点で当事者を抱える保護者の反響は大きく、広島市内は勿論のこと遠方からも診療を希望する声が殺到しており、完全予約制のクリニックは早くも申し込みでいっぱいになっているようだ。

子どもたちひとり、ひとりの色(個性)を大切にすることがモットー。直接的な医療・福祉サービスの提供はもとより“子どもの支援は保護者支援、家族丸ごと支援”“延いては先生たち支援”と子どもたちを取り巻く環境への支援も自分たちの使命――と志を定める森川社長。これからの夢を聞いてみると「不登校、ひきこもり、ニート、様々なケースはありますが、20歳になったとしても発達障がいの子どもたちに終わりは来ません。個々の良いところを見つけて大きく伸ばし、その良さを社会で発揮できるよう、これまで事業化してきた福祉、医療に続いて教育事業に取り組もうと思っています。近い将来、学校を作るのが、いま最大の目標です」。

子どもたちのよりよい未来を願うリーダーのタクトが療育の世界で、さらに素敵なメロディーを奏でようとしている。

●プロフィール

●森川敦子 株式会社奏音 代表取締役

県立広島大学大学院卒業

作業療法士、精神保健福祉士、保健福祉学修士。「質のいい療育と療育の場の提供」「切れ目のない途切れることのない支援」を理念とし、2010年に㈱奏音、2016年に㈱奏音まつやまを設立。現在6つの通所支援事業所と2つの訪問看護事業を運営。2020年8月に「奏音こどものこころクリニック」(児童精神科・小児科)開設。

●医療法人社団芳誠会 奏音こどものこころクリニック

〒730-0002 広島市中区白島中町2-2 2F

TEL:082-962-7070 FAX:082-962-7071

ホームページ http://kanon-clinic.or.jp/

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