【広島人の履歴書】
File.6 寺西由美子さん 有限会社 寺西設備 代表取締役 《続編》

【広島人の履歴書 】


広島と縁のある各界のオピニオンリーダー自らが語る今日までの足跡。知られざるエピソード満載の履歴書(プロフィール)には、現在を生きるヒントが隠されています。

亡夫から命は有限であることを学ぶ。
悔いのないように「人生 生ききる」

剣道に明け暮れるお転婆娘だったわたしが、水道工事屋の寺西家に嫁いで今年(2023年時点)で34年。2016年5月、主人の突然の他界に伴い、家業の社長を継ぐこととなり、紆余曲折を経て、現在に至る半生を「広島人の履歴書」にまとめてから1年余り。「経営者として、母として、女性として、新たな挑戦を続けていく」と結んでから、それほど時間は経っていませんが、この間にも自分の身の回りで様々なことがカタチとなって動き出しました。寺西由美子の履歴書の新たなページとしてお伝えします。

急務は次世代の人材育成。

まずは家業である水道工事業・有限会社寺西設備について。一時の不況からはひとまず脱出して、現在は水道局や広島市指定上下水道工事業協同組合(以下、上下組合)から斡旋してもらったメーター交換や水道ボックス補修工事などの関連修理、工務店や不動産会社、知人などから紹介された水回りの設備工事と修理を手掛けています。忙しい時は、わたしも現場に出動し、総勢6人体制で業務に当たっていますが、近年の最重要課題といえば、やはり次世代の社員の育成です。業界全体の高齢化が進む中、経験豊富なベテランの従業員がいるうちに、入社7年目で現在32歳の娘婿たちと一緒に頑張ってくれる若い人材を補充しておかなくてはいけません。新卒でも中途でも、とにかく若い人を採用したいので、先日、正式に上下組合の就職課に資料を提出して本格的に求人募集することになりました。これまでは知人の紹介による入社ばかりでしたが、ようやく次の一歩への土俵に上がれた気がします。

というわけで、今回の求人を含め、地元の業界のみなさんのお力を借りる機会も増えましたが、いつもお世話になっている上下組合さんから、なんと会報紙「水協ニュース」で今年4月からわたしが1年間連載コラムを書く機会をいただいたんですよ。当初は、水道工事業という男社会の中で主人に代わって社長が務まるのか?周りから心配されていたことを考えると、こんな話をいただけるなんて信じられない気がします。寺西設備の代表として、一組合員としてお役に立てるよう精一杯頑張ります!

ちなみに寺西設備は2025年に創業60周年を迎えます。急逝した主人の跡を継いで社長に就任したのが8年前なので、わたしが社長になってちょうど10年目に当たる年です。それまでに若い人材を採用し、次世代にバトンタッチできる体制を構築するのが自分の使命だと考えています。あと、60周年を迎えた時には、今までお世話になった全てのスタッフを集めて「感謝の会」を開くことは、絶対に実現したい夢ですね。

一方、家業が不況に巻き込まれた際に「何とかしなくては」と、わたしがノエビア化粧品の代理店を皮切りにスタートし、寺西設備本社の2階に女性の〝心と身体と美容〟に関する様々なメニューを備えたワンストップサロン「placidez.」(プラシデス)を開設して20年目を迎えた美容事業の方は…。化粧品販売を目的に開業したサロンですが、主人の他界を機に人の生き方を考えるようになり、美と健康と心をバランスよく整え、女性が〝笑顔で自分の人生を生ききる〟トータルサポートを行うことに比重を置くようになりました。ありがたいことに最近は、以前よりも自分で「本当にキレイになりたい」という目的意識を持ったお客さまが増えてきたので、この機を逃さず、女性が自立するために、必要なお手入れや資格取得を志す人たちのサポートにさらに拍車をかけますよ。

歌はライフワーク。

仕事以外に自分がライフワークとして取り組んでいるミュージカルや歌を唄う活動でも、この1年余りで大きな変化がありました。もともとは15年ほど前に東京の大学のミュージカル学科に進んだ長女と共通の話題を持とうと首を突っ込んだミュージカルの世界ですが、ここまでのめり込むようになったのは歌の持つ力を知ったからです。主人が他界し、覚悟を決めて「わたしが社長を継いで家業を頑張ります」と宣言したものの、自分では気付かなかった喪失感やプレッシャーにさいなまれ、心身ともに悲鳴を上げていた時のこと。ミュージカルやシャンソンの先生、シンガーソングライターのHANZOさんなど、大好きな人たちの歌を聞くと、涙が止まらなくなり、心が浄化される気がしたんですよ。技術的に上手いだけでなく、聞く人の心に届く歌は、元気や勇気、前向きに生きる力を与えてくれることに感動しました。

以来、本格的な歌のレッスンをスタートし、コンサートやライブなどのステージに立つ経験も積んでいましたが、2021年6月、わたしにとって運命的な出会いがありました。その日は亡くなった主人の誕生日で結婚記念日でしたが、毎年一緒に過ごしていた娘が就職で上京したため、初めて一人で過ごすことになり、東京で活躍されているプロのシャンソン歌手、水織ゆみさんの広島でのライブに誘われたんです。会場で聴いたのは、まさに心に響く歌ばかりで、涙が止まりませんでした。終演後の打ち上げにも参加させていただいて、ご本人とお話すると、名前が同じ〝由美子〟だったこと、嫁ぎ先が自営業だったこと、同じ時期に主人が他界したことなど、なんと3つも共通点があったのです。その後、奇跡が重なって東京で再会できた折に、迷うことなくご指導をお願いしたことは言うまでもありません。以来、東京に出かける時はレッスンしていただけるようになりました。

水織先生の指導を受け始めて1年ほど過ぎた2022年8月30日に挑戦したのが「第9回JCCシャンソンカンツォーネコンクール全国大会」です。ミュージカルの縁でスタートして10年ほどのシャンソン歴で、かつて2度ほど他の大会にチャレンジしたことはありましたが、結果にはつながらず、コロナの影響などでレッスン難民になりかけていた矢先、水織先生とご縁をいただきました。今回は先生の訳詞による「水の永遠」という曲でエントリーしたところ、なんと準優勝を受賞‼。自分としては、本番で緊張が高まり、最後が不完全だったので受賞を諦めていましたが、きっと先生の素晴らしい訳詞に味方されたのでしょう。シャンソンを愛して活動されておられる優れた方のコンクールに勇気を出して挑んだ結果、このような栄誉をいただき、応援してくださったみなさまに感謝しかありません。

CD完成!ステージネームも一新。

そして、この年の12月1日には、念願のCDリリースを果たしました。初のオリジナル曲「行雲」(井原武文・寺西悠里恵作詞・野村彰浩作曲・EARSY編曲)と「マイ・ウェイ」(水織ゆみ訳詞・浅利紀子編曲)のカップリングです。自分の歌のCD化という思いもよらなかった夢が実現した経緯とは…。ライブなどを重ねるうち、何人かの人に「オリジナル曲が1曲あると良い」と言われていたのですが、作り方も分からず、迷っていたわたしに「あなたのご主人への思いを綴ったCDを出してみたら!」と背中を押してくれたのがミュージカルの大先輩で、わたしにモデルや自主制作映画に挑戦する機会を与えてくださるなど、15年来お世話になってきた経営者・井原武文さんでした。

ミュージカルだけでなく、同じ経営者の先輩として新米社長のわたしに「迷ったら進め!」といつも励ましてくれた井原さんですが、実はこの頃、末期がんの抗がん剤治療をされており、なんとしてもその期待に応えなければ、と制作を決めた次第です。井原さんにも作詞を手伝っていただき、CDが出来るのを楽しみにしておられたご本人を元気付けるためにも「恥ずかしくないものを!」とプロの方の協力を得て、作業を急ぐことに。こうして、なんとか無事にCDは完成。わたしの挑戦を見届けた直後の年末に井原さんは、お亡くなりになられました。主人と義父母が他界する際にいずれも最期のお別れができなかった自分としては、病床のご本人に完成したCDと感謝の気持ちをお届けできたことが、せめてもの救いとなりました。本当に出会えてよかった大切な恩人です。

CD発売を機にリリースライブを4回開いた後は、水織先生が広島や四国で開かれるライブに出演させていただくなど、わたしの歌への情熱もますます高まっていきました。ところで、わたしは主人が亡くなって水道工事屋の代表になってから本業以外の美容や歌の活動を行う時は、九星気学の先生からつけていただいた選名の〝悠里惠〟を使って「寺西悠里惠」と名乗っていたのですが、オリジナル曲のCDを作って、単独ライブも行うようになった頃、水織先生から正式にステージネームをいただいたんです。その名は「水麗(みれい)ゆみ」。先生とは3つも共通点のあるわたしに、ご自身のステージネームと一字違い、何より水道工事の本業のイメージも感じられる素敵な名前を授けてくださるなんて、まさに光栄の至り⁉ ちなみに現在は、この名前の略称「水麗(みれい)」をステージネームに使っています。

さらに水織先生からは、夢のようなお誘いもいただきました。先生は日本訳詞家協会の副会長を務めておられるのですが、この協会の会長があの加藤登紀子さんなんです。先生のご縁を通じて2023年6月7日に、東京の古賀政男音楽博物館けやきホールで行われた第44回訳詞コンサート「世界の歌を美しい日本語で」のステージに立たせていただけたんですよ。わたしが加藤登紀子さんと同じ舞台に立てる日が来るとは…会場入りした時からずっと緊張し、リハーサルはガチガチでしたが、ステージでご一緒したみなさんがとても良くしてくださり、本番は楽しんで歌うことができました。当日、二部の最後に加藤さんの歌を3曲聴いた時には、人生の溢れる愛と魂を感じる歌声に感動して涙が溢れ、歌詞を伝える力の大切さを痛感。歌を続けてきたからこそ叶った宝物のような経験を通じて、「まだまだレッスンに励まねば!」との思いが強まりましたね。

そして、また挑戦は続く!

主人が存命中の頃から、2人の娘たちに会いに東京に行くのが大好きだったわたし。主人が他界した後も歌のレッスンや四柱推命、パーソナルカラー・ヒューマンカラー診断、骨格診断などの資格取得のため、足を運ぶ機会は多かったのですが、心の中で「いつか遊びや勉強のためではなく、ビジネスを行うために上京するようになりたい」と思うようになったんです。考えてみると、水道工事屋の社長業、ミュージカルや歌の活動、「ミセスオブ・ザ・イヤー」や「シングルマザービューティーアワード」といった大会への挑戦など、その時、その時の人との出会いから生まれたご縁を通じて、これまで様々なことを学んできました。東京でビジネスをするならば、「会社経営、歌、美容…わたしが勉強して来たことを人に伝えたい」との目標が浮かんできた次第です。伝えたいお相手は、シングルマザーで起業している女性、〝自分を整えたい〟と努力している女性、〝自分を変えたい〟と願っている女性など。具体的に何をやるかは、今のところ内緒ですが、2024年1月のスタートを目途に目下準備を進めている真っ最中です。東京という大きなステージで動き出すわたしの次のチャレンジにご期待ください!

時間が経つのは早いもので昨年(2022年)、主人の7回忌を終えることができました。ついでに申しますと6月4日は主人の誕生日であり、私たち夫婦の結婚記念日です。主人が生きていれば、結婚34年を迎える今年(2023年)、娘から「お父ちゃんとお母ちゃんが出会ってくれてありがとう」というメッセージが届きました。何よりも嬉しい言葉です。主人には本当に沢山の愛をいただき、おかげさまでわたしも親になれたし、多大なるサポートにより母として成長させてもらえました。亡くなってしまい、姿を見ることは叶いませんが、いつも見守ってくれていることをよく感じます。

なぜなら2年前に水織先生と出会ったのも、コロナ禍により疎遠になっていた方と1年越しで和解できたのも6月4日のことでした。今年はこの日にお墓参りしたタイミングで一旦立ち止まる出来事があり、そのおかげで自ら進む方向を再確認できたことなどもありました。主人はいつもどこかで、わたしのことを気にかけて見ていてくれるのでしょう。短い結婚生活ではありましたが、抱えきれないほどの大きな愛をもらい、寺西家に嫁ぐことができた縁に感謝しています。命は有限であることを自分の身をもって教えてくれた主人の分まで、わたしの人生を悔いなく生ききってみせます。

人生 生ききる!――自分の運命を切り開くのは自分であり、境遇を作るのもまた自分です。いつの日か主人に「わたし生ききったよ!」と笑顔で報告できるように、いまこの瞬間をありがたく、楽しんでいきたいですね。寺西由美子の履歴書に次は、どんなページが加わるか?自分でもワクワクしています。

■寺西由美子(てらにしゆみこ)PROFILE

有限会社 寺西設備 代表取締役。
トータルビューティーサロン placidez.(プラシデス.) 代表。
1965年6月14日生まれ、広島市出身。鈴峯女子短期大学卒。

【保有資格】
〇配管工 〇給水装置主任技術者 〇排水設備主任技術者 〇2級土木施工管理士 〇スキンケアアドバイザー 〇MAKE UP CREATOR 〇パーソナルカラーリスト 〇ヒューマンカラーアナリスト 〇スマイルクリエーター 〇四柱推命鑑定士 〇剣道五段

【趣味】
ミュージカル鑑賞、スポーツ、ミュージカル、歌
※「寺西 悠里惠」改め「水麗(みれい)」名義でも活動中!

〇フェイスブック https://m.facebook.com/yumiko.teranishi.31/
〇インスタグラム https://www.instagram.com/yumiko_0614/
〇YouTube https://www.youtube.com/channel/UCWyQMe-OLOh4S7UIgoXvj8Q/featured

■有限会社寺西設備

【業務内容】
配管工事、衛生設備工事、管工事、給排水設備工事、水道衛生工事・保守、水道衛生設備工事、水道衛生設備保守、井戸ポンプ工事

〒731-5125 広島県広島市佐伯区五日市駅前2丁目6−30
電話 082-921-3531 FAX 082-921-6061
〇フェイスブック https://www.facebook.com/teranishisetsubi/

■Relaxing salon placidez.〈プラシデス〉

【業務内容】
トータルビューティーサロン(スキンケアサービス フェイシャル・ボディエステ他)

〒731-5125 広島県広島市佐伯区五日市駅前2-6-30
営業時間 10:00〜19:00 日祝定休、他不定休
〇ホームページ http://placidez.net/
〇フェイスブック https://www.facebook.com/profile.php?id=100056212996774
〇インスタグラム https://www.instagram.com/placidez_salon/

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