【広島人の履歴書】
File.3 高橋雄幸さん 医療法人ゆうこう・ゆうこう歯科院長 《前編》

【広島人の履歴書 】


広島と縁のある各界のオピニオンリーダー自らが語る今日までの足跡。知られざるエピソード満載の履歴書(プロフィール)には、現在を生きるヒントが隠されています。

実家は呉市豊町のみかん農家、
広大歯学部で学び、歯科医の道へ

広島市の中心部・紙屋町と郊外・安佐南区広域公園前を結ぶアストラムライン(広島高速交通広島新交通1号線)「安東駅」徒歩1分の場所に「ゆうこう歯科」を開設して、もうすぐ30年を迎えようとしています。今日まで「すべての患者さんの安心・安全・笑顔のために…患者さまの“口福”のお手伝いをします」をモットーに、地域のみなさまの口内トラブルを解決する歯科医療に取り組んできましたが、わたしも還暦を過ぎ、次の展開を考える時期に突入しました。ひとつの節目としてこれまでの自分の足跡を振り返ってみます。

わたしは昭和35年7月1日、大崎下島と周辺の小島によって構成される呉市豊町(ゆたかまち※旧豊田郡豊町)で生まれました。「耕して天に至る」といわれた豊町は、島全体に段々畑が広がり、“大長(おおちょう)みかん” の産地として知られています。家族は、みかん農家を営む両親と弟。幼い頃は、少し引っ込み思案なところもありましたが、海辺まで歩いて3~4分という場所に実家があったことから、海で泳いだり、釣りをしたり、自然に囲まれたのどかな島でのんびり育ちました。猫も手も借りたい忙しさとなるみかんの収穫期は、家業の手伝いに駆り出されたものです。もっとも、同級生の7~8割がみかん農家の子供なので、珍しいことではありません。

小学校、中学校は地元の学校へ進みました。小さい時から機械いじりが好きだったので中学校では、無線部に入って当時流行したアマチュア無線に熱中しましたね。勉強の方もどちらかというと理数系が得意でした。この頃は「将来はエンジニアになりたい」と漠然と思っていましたね。高校受験の際には、大学進学を目指すならば地元の高校よりもレベルの高いところを狙う方が良いと言われ、進学校の多い呉市の高校を受験することに。運よく呉市立三津田高等学校に合格し、学区外の高校へ入学することになりました。生まれ育った島を離れ、呉市内でのひとり暮らしの始まりです。

実はそれまで、買い物などの用事で家族と島外へ出かけるのは、当時デパートが3つあり、高速船で30分の今治市か、親戚の住む広島市がほとんどでした。自分にとって呉の街は広島に行く時の通過点くらいの認識しかなく、まさかそこに下宿して高校生活を送ることになるとは…。朝・夕の食事は下宿先で作っていただいていたので、昼食は学生食堂が基本です。メニューが少ないのでカレーライスやパンばかり食べていましたよ。三津田高校では美術クラブに入ったりもしましたが、下宿と学校の往復であっという間に3年間が過ぎていきました。

そして大学受験。残念ながら志望校に受からず、広島市にあった当時のYMCA予備校に通うことになり、下宿先も広島市内の農協系の学生寮に引っ越しました。呉よりはるかに都会で、賑やかな広島の街の誘惑にも負けることなく、1年間、まじめに勉強したところ、広島大学歯学部に合格。広大歯学部を志望したのは、高校時代の同級生である内藤隆昭さん(現・医療法人健歯会ないとう歯科医院 理事長/萩歯科医師会 会長)がひと足先に入学しており、いろいろ話を聞いていたので自分も目指そうと思ったのが理由です。ちなみに浪人時代に暮らした学生寮は居心地もよく、それから大学2年までお世話になりました。

歯学部の教育期間は6年間で、歯科医師になるには教養課程と専門課程のカリキュラムで単位を取得し、歯科医師国家試験に合格しなければなりません。2年生までは中区千田町にあった当時の学び舎に、3年生から南区霞1丁目の広島大学病院に通いました。講義のほかに3年生からは臨床実習もありますし、口の中以外の内科や外科の勉強も必須です。座学から実習まで、あれこれやることが多く、大学というよりも専門学校に入学したような気がしていましたね。

大変だったのは、学期末がテストの期間となる中学校や高校時代と違い、講義が終わるたびに毎回テストがあること。特に土曜日の午後から試験が行われることが多く、成績が悪ければ追試もあるので週末がくると憂鬱でした。ただ、実技の方は、もともと手先が器用だったので得意としていました。歯の模型を10本くらい早くキレイに削る授業の時は、クラスでトップの成績でしたよ。幼い頃から機械いじりが好きで細かい作業を好んできたのが役に立ったのかも?

中区千田町で過ごした2年間は、外国人と親睦を深める「国際交流会」のサークルに参加したり、大学生として人並みにキャンパスライフを楽しむこともありましたが、最優先すべきは目標である歯科医になることです。以降、何はともあれ勉強に励み、大学を卒業する昭和62年5月、念願の歯科医師免許を取得しました。

歯科医師資格を取得した後、山口医療生協宇部協立歯科で5年間、徳島医療生協健生歯科鳴門で1年間、勤務医として経験を積みました。自分としては勤務医のままでも良かったのですが、たまたま現在の診療所である広島市安佐南区安東の物件での開業を勧められたんです。広島市郊外のベッドタウンとして人口が急増する安佐南区で、翌年秋に開催される「広島アジア大会」会場へのアクセス路線の役割を担って大会直前に開通する新交通システム「アストラムライン」の停車駅“安東駅”が目の前という利便性の良い場所でした。

大会終了後も地域交通の要所として発展が期待できる立地性が決め手となり、わたしの名前をそのまま屋号にした「ゆうこう歯科」を開業したのは平成5年6月、まもなく33歳を迎える頃のことです。最初は自分と女性スタッフの2人でスタート。好立地ではあるものの、診療所が入居したのはビルの4階でした。外から目立ちにくいため、1階に看板を出したり、新聞の折り込みチラシなどで周辺地域に広告を打ってみたり、あの手この手でPRを進めたところ、なんとか患者さんがついてくれて安心したものです。こうして勤務医から一国一城の主として独立、この地で診療を始めてから今年で28年目を過ぎたわけですが、辺りから田畑風景が消え、次から次へとマンション建設が進むなど、診療所を取り巻く環境は大きく変わりました。

まず、アストラムラインが開通して周辺地域の発展に拍車がかかると、同業者の数が急増しました。うちが開業して4年目をピークに歯科医院が増え続け、3年間で25%売上げが落ちた時などは「開業する場所を間違えたか…」と後悔したくらいです。地域内に沢山の歯科医院がある中で、うちを選んでくださる患者さんたちに安心して通っていただくため、わたしが常に心掛けているのは患者さんの待ち時間を少なくすること。これにつきますね。

予約時間よりも早く来られたり、あるいは遅れて来られたり、患者さんの来られるタイミングによって時間が前後する場合もありますが、原則として予約通りに診察するようにしています。時間通りに来られた患者さんを15分以上待たせることは、ほぼありません。急患が飛び込んで時間が狂うケース以外で、患者さんを待たせると患者さんの方も遅れて来られがちになるため、時間の管理はお互いのためにも大切です。それが守れないとスタッフの終業時間も遅くなりますからね。「時間を大切に!」を徹底することで、うちの場合は残業を極力なくすようにしています。

一方、診療については、消毒や滅菌にも逸早く取り組み、平成10年からは“タービン”など、院内で使用する歯科器具の完全滅菌に努めてきました。診療設備としては、平成29年春に大型の自動器具洗浄機を導入したほか、低被爆、高解像度の撮影で安全かつ高度な診断・精査が可能になり、撮影速度も早いことから患者さんの撮影時間が軽減される「NAOMI-CTNAOMI-CT」や、治療時に発生する細かい粉塵を吸い取り、安全な環境づくりに役立つ「フリーアーム・アルテオ」などを導入し、施術の効率を高めています。

基本的には開業以来、患者さん、ひとりひとりの予約時間を長めに取り、1回1回の処置を確実に行い、スピード感のある診療を心掛けてきました。現在は、歯科衛生士不足が叫ばれる中で3人の歯科衛生士が常勤する体制を整え、口腔内のケア、メンテナンスといった口腔衛生管理にも力を入れています。また、健康保険診療を基本としながらも、床矯正、ホワイトニング、インプラントや、ワイヤーの目立たない義歯など、最新技術による高いレベルの診療も取り入れ、確実に成果を出しているところです。 「人生の幸福度アップのため、お口の健康度アップは、“ゆうこう歯科”におまかせください」を謳い文句に今日まで歩んで来ましたが、一方で「もっと歯科にできることがあるはず」の思いが強まっています。以下、《後編》に続く。

《高橋雄幸(たかはしゆうこう) PROFILE》

1960年生まれ。呉市出身。1987年広島大学歯学部卒業後、医療生協健文会・宇部協立歯科診療所勤務。1992年から医療生協・健生歯科なるとに勤務したのち、1993年6月「ゆうこう歯科」開業。2014年4月「医療法人ゆうこう」を設立。

〇矯正:床矯正研究会会員
〇インプラント:IPOI 臨床研究会会員(POI インプラント・マスターコース修了)
〇予防:日本ヘルスケア研究会会員
〇歯周病:国際歯周内科学研究会会員
〇全身と噛み合わせ:全身とかみ合わせとの関係を考える会会員
〇コミュニケーション:CHP(クリニカルヘルスプロモーション)研究会
〇義歯:アーチフェイシャル咬合研究会アドバンスコース修了
〇塩田義塾会員

【医療法人ゆうこう ゆうこう歯科】
所在地:〒731-0153 広島市安佐南区安東2丁目10-2 エムタウンビル4F
電 話:082-872-7878
メールアドレス:info@you-cou.com
休診日:水曜日(不定期)、日曜・祝日

■ホームページ http://www.you-cou.com/

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