【世界に羽ばたく広島人 】
Vol.5 「ひろしま留学大使」・グエン・ティ・トゥイ・アンさん

【世界に羽ばたく広島人 】


世界中から人々が集う地・広島。宮島や原爆ドームなどの観光にとどまらず、広島を舞台に活躍する外国人が増えています。その一方では、広島と世界の架け橋となり、多文化共生の一助を担う日本人も多くいます。様々な国籍の“広島人”へのインタビューをどうぞ!

世界中から人々が集う地・広島。宮島や原爆ドームなどの観光にとどまらず、広島を舞台に活躍する外国人が増えています。その一方では、広島と世界の架け橋となり、多文化共生の一助を担う日本人も多くいます。 様々な国籍の“広島人”へのインタビューをどうぞ!

「まだ見ぬ世界へ飛び込みたい!自分が知らない世界を見てみたい!」というチャレンジ精神を武器に来日を決意したというグエン・ティ・トゥイ・アンさん。今年で来日6年目(2025年1月時点)を迎え、現在は2024年度「ひろしま留学大使」として様々な活動を通じて、広島留学の魅力を世界に発信しています。若さゆえの悩みや楽しさ、日本での暮らしの様子や今後の目標など、留学生の“今”を聞いてきました。

まずは、自己紹介をお願いします!

私は、ベトナムのチャビン省で生まれました。チャビンは、ベトナムの南部に位置し、大都市であるホーチミンからは車で2時間30分から3時間くらいの場所にあります。高校卒業まではチャビンで過ごしましたが、当時の私は、とにかく好奇心旺盛で、外国の学校ではどんな勉強ができるの?外国の人はどんなものを食べてどんな生活をしているの?と、自分が知らないことは何でも知りたいと思う性格でした。そこで、高校卒業後の2019年、「海外で勉強したい」という強い気持ちで日本への留学を決意。留学先に日本を選んだ理由としては、当時、ベトナム国内では、治安が良いという理由で日本の人気が高かったことに加え、日本留学をサポートする窓口が充実しており、手続き面において、比較的負担が少なかったという理由が挙げられます。とはいえ、金銭的な負担は決して軽いものではなかったため、この点は両親を頼ることに。もし、あの時、両親の助けがなかったら、今、私がこうして日本で楽しく生活することはできていないので、私を応援してお金を出してくれた両親に本当に感謝しています。

来日後、現在までの経歴は?

来日してすぐ、福山市内にある日本語学校に入学し、二年間かけて日本語の基礎を勉強しました。日本への留学を目指していたので、ベトナムで日本語の勉強はしていましたが、実際に日本で生活すると、自分の日本語能力の低さを痛感。必死になって勉強しました。授業で日本語を勉強するのはもちろんのこと、私にとっては、日常生活で人と話すこと自体が勉強で、とても刺激的な毎日でした。元々は、日本語のカリキュラムが修了したらすぐに4年制大学に進学する予定でしたが、コロナ禍で経済的に厳しかったこともあり、2年制の専門学校に入学しました。専門学校では、「経済の歴史や仕組みについて知りたい」という気持ちから貿易コースに所属し、経済学の基礎を勉強しました。こうして、少し遠回りしつつも、来日から4年が経過した2023年に無事、福山大学に入学。現在、経済学部に所属する2年生として学校生活を送っています。

「ひろしま留学大使」を知ったきっかけは?

同じ学部にネパール人の先輩がいるのですが、その方が2023年度の「ひろしま留学大使」をされていました。先輩から「ふだんできないようないろいろな体験ができる」、「ほかの学校の子と友達になれる」、「日本の文化を学べる」という話を聞き、好奇心旺盛な私としては、チャレンジしないわけにはいきません。福山大学は地方の大学なので、国立大学である広島大学や、広島市内中心部に位置する県立広島大学などの学生が優先的に選ばれるだろうと思い、受かればラッキー程度に考えていましたが、私と一緒に応募した福山大学の友人も揃って選ばれ、驚きと嬉しさが込み上げました。

大使としての活動を教えてください!

まず、「ひろしま留学大使」という制度について簡単に説明すると、「ひろしま留学大使」とは、「広島県留学生活躍支援センター」(広島市中区中町)が主導する活動で、海外から広島県に留学する学生を増やすことを目的として創設されました。「支援センター」は、毎年、県内の留学生25名程度を「ひろしま留学大使」に任命し、大使は、自らの大学生活や日常生活などについて、SNSを通じて広島留学の魅力を国内外に発信しています。このため、活動内容や活動場所にあまり制限がなく、大使がやりたいと思った活動や伝えたい魅力について、主体的に発信できるところがポイントです。今年度は、現時点で大使全員が参加する活動として茶道体験、個々人の活動としてボランティア活動を実施しました。私は、ボランティア活動として、昨年9月に東広島市西条で行われたナイトマーケットに参加しました。当日は、想像以上に忙しく、テントの設営や飲食ブースの設置準備、会場の装飾など、ほぼ全ての準備に関わることに。当然ですが、周りは日本人ばかりですので、最初はとても緊張しましたが、私が日本語でコミュニケーションをとれるよう、ゆっくり話したり、簡単な言葉を使ってくれたりと、皆さんの気遣いのおかげで、最後まで楽しく活動することができました。今後は、二回目のボランティア活動や着物の着付け体験など、まだまだ大使としての活動が控えており、今から楽しみです。

このほか、大使の活動として、毎月変わるテーマに沿って、SNSに写真や文章を投稿するという取組みもあります。例えば、「広島のおすすめスポット・食べ物」や「ふだんの暮らし」など、月ごとに変わるテーマに沿って、写真や文章でSNSに投稿します。最近の学生は、ほとんどの人が日常的にSNSを利用しているので、写真や短い文章で発信することは、気軽に見てもらいやすく、とても有効だと思っています。また、SNSの活動については、私自身が大使として魅力を伝えるため以外にも、ほかの大使がどこでどんな活動をしているのか、おいしいと思った食べ物は何か、などが分かるため、見る側としても楽しんでいます。

日本での楽しそうな生活が目に浮かびます。来日してから苦労したことなどはありますか?

一番は日本語です。今も苦労しています。日本語って本当に難しいですよ。来日直後と比べれば、いろいろなことが話せるし、聞けるようになりましたが、それでも友達と話すときの言葉遣いと目上の人と話すときの言葉遣いの使い分けが難しくて。あと、最近は若者言葉。これはベトナム語でもそうですが、若者特有の言葉ってあるじゃないですか。この若者言葉が覚えられないんですよね。でも、その代わりに、「若者言葉の存在は世界共通なんだ!」ということがわかって勉強になりました(笑)。

そのほかは本当に楽しいことばかりです。ふだんの学生生活では、ベトナム人の友達に加え、中国やネパール、バングラデシュなど、様々な国籍の学生と一緒に勉強したり遊んだりできますし、休みの日には友達とラーメンを食べに行ったり。もちろんアルバイトもしなければいけませんが、アルバイト先でも日本語を教えてくれるので、とても勉強になります。とりわけ私の周りでは、日本人の方が優しく接してくれるおかげで、困りごとなどもすぐに相談でき、毎日楽しく過ごすことができています。

これからの目標は?

大使として、ベトナムにいる学生に広島留学の魅力を発信していきたい。広島という町は、中枢都市としての利便性を持ちながら、歴史的な建造物や自然の豊かさも兼ね備えており、とても住みやすい場所だと感じています。また、学問だけではなく、アルバイトを始めとする地域住民との関わりの中で、礼儀正しさや時間を守る大切さを学ぶことができ、今後、社会人になるために必要なスキルを身につけることができます。このような留学の魅力を母国の学生に伝えられるよう、何か新しい取組みを始めたいと思っています。

また、個人的には資格の勉強に励むつもりです。私は、大学卒業後も日本で働きたいと思っているので、日本語能力試験でN1(最難関)の資格も取りたいですし、英語も話せるようになりたいです。あとは、エクセルやワードを使いこなすOfficeの資格もあるので、これにも挑戦する予定。来日することを決めた時から今日まで、変わらずチャレンジ精神旺盛なので、できることは全部やる勢いで、卒業までにいろいろなことに挑戦して充実した学生生活を送りたいです。

●プロフィール

「ひろしま留学大使」・グエン・ティ・トゥイ・アン(Nguyen Thi Thuy An)

ベトナム・チャビン省出身。2019年に来日し、福山市内の専門学校に4年間通ったのち、2023年に福山大学経済学部に入学。現在、2年生。2024年8月~現在まで、2024年度「ひろしま留学大使」として活動中。
趣味はベトナム料理を作ること。
日本のラーメンが好き。

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