ロックンロール・サーカス

こんち、これまた、ご機嫌いかが?流川の「レコードバー野中サンハウス」店主でございます。2018年冬に開店した「野中サンハウス」では、「アナログ・モノラル・ローファイ」を合言葉に、日々様々な音楽をお楽しみいただいております。2021年春、広島にサーカスがやってくる!木下大サーカス、3月20日~6月7日、マリーナホップのすぐそばで。みんなで行こう!と言うわけで、今回は「ロックンロール・サーカス」のお話。

「ロックンロール・サーカス」とは、1968年にローリング・ストーンズがテレビで放送するために制作した映像作品のこと。作ったのはいいが封印され、日の目を見たのは、28年後の1996年。VHSとCDがリリースされ、2004年にDVDが出た。ちなみに今はブルーレイもございます。

1968年と言えば、ビートルズの「サージェント・ペパーズ」を真似した、前年のアルバム「サタニック・マジェスティー」から脱却し、彼らの本領であるブルースへ回帰した名盤「ベガーズ・バンケット」を録音した年。そのアルバムの広報を兼ねたテレビ番組が、1968年の12月に撮影されたのに、なぜ28年もほっとかれたのでしょうか?いろいろな要因はあるとして、「主催者であるローリング・ストーンズよりゲストの演奏が良すぎたから」ではないのか、その辺考察してまいりましょう。

最初のゲストは、「ジェスロ・タル」。1968年にデビューしたばかりなので、ストーンズの面々は、舐めていたのであろう、とんでもない勘違い。写真は、1972年のベスト盤「リヴィング・イン・ザ・パスト」であります。ジャケット中央に、片足立ちで横笛を吹くもじゃもじゃ男の絵があります。これがリーダー、イアン・アンダーソン。初めて「フルート」でブルースソロを吹いたと思われる、何故か片足立ちでヨロヨロしながら。目つきは、ぶっ飛んでるし、変な衣装と、癖の強いボーカル。で、あと3人、変に猫背なドラマーに、ブルースハープを吹きながら弾くベーシスト。しかもギターは、この時期のみ参加の、後に「ブラック・サバス」で大成するトニー・アイオミ!あのトニー・アイオミが一番地味に見えるバンド、「ジェスロ・タル」、ストーンズに勝ち目なし、ああ残念。

続くゲストは、「ザ・フー」。ストーンズのほんのちょっと後輩、デビューは1965年。全盛期のザ・フーの特徴は「楽器をぶっ壊すこと」。この「ロックンロール・サーカス」では、さすがに遠慮しているが、ギターのピートは、ぴょんぴょん飛びつつ、腕をぐるぐる振り回しつつ、しかも倒れかけたドラム用のマイクスタンドを立て直す余裕。演奏力、パフォーマンス力が、半端ではないのだ。おまけに曲の頭で、軽―く4人でハモってみせる。なぜ彼らを呼んだのか?ストーンズに勝ち目なし、ああ無念。ちなみに写真のLPは、1973年の2枚組コンセプト・アルバム「四重人格」、超名盤。のちにスティング主演で映画化、邦題は「さらば青春の光」。

続いては、アメリカの黒人ブルースマン「タジ・マハール」。ストーンズとほぼ同い年、デビューは1968年。ライ・クーダーとも仲良しの腕利きブルースマン。なお、このライブに連れてきたギタリストは、先月の本コラム「名盤紀行」で紹介した、インディアンのギター名手、ジェシ・エド・デイヴィスなのである。あのデュアン・オールマンが参考にしたスライド・ギタリスト。イギリスの若者が、アメリカのブルースへの憧れで始め、まあまあサマになってきたバンドが、ローリング・ストーンズである。キース・リチャーズが「オープンG&6弦抜き」という自分のスタイルを確立するのが、おそらく1971年。実は、1968年頃は、サイドギター名人ではないのである。

そこへもってきて、タジ・マハール、強烈なのである。声は勿論真っ黒、動きも真っ黒。しかも、ハンドクラップが、滅茶苦茶カッコイー。本物の黒人を呼んでどーするのだ、ストーンズに勝ち目なし、ああ残念無念。

さて、いよいよハイライトは、「ジョン・レノン」である。1968年12月は、ビートルズの「ホワイト・アルバム」が出た直後。なぜ、あの「恐いジョン兄貴」を呼んだのか?1967年から人前で演奏していないジョンを、ミックとキースは、みくびったのか?ジョンが連れてきたメンバーは、ギターがエリック・クラプトン、ドラムにジミ・ヘンドリクス・バンドのミッチ・ミッチェル。ベースは、ストーンズから借りている。「おいキース、ベース弾け」である。キースが一所懸命真面目ベースをに弾いている。そのバンド名は「The Dirty Mac」、なんと「汚いマッカートニー」、なんて意地悪ジョン兄貴。ミック・ジャガーは完全にビビっとる。ジョンの隣のミックの肩幅が、とても小さく見える。完全にジョンのいいなりだ。

また、演奏が最高である。ジョンのサイドギターも歌も絶品である。この映像が残ったのが「ロックンロール・サーカス」最大の成果と言っても過言ではない。ストーンズに勝ち目なし、ああ恐いよ、ジョン・レノン。最後にストーンズは、6曲演奏している。ブライアン・ジョーンズの姿も見えるので、貴重ではある。なかなかに良いのである。が、しかし、霞むのである。ああ、本当にお気の毒。

そんなこんなレコードが、そこそこある「レコードバー野中サンハウス」へ、ぜひおはこびください。シングル盤は、昭和歌謡から映画音楽まで、雑に約1000枚ございますが、レコードやCDの持ち込みも可能です。また弊店、蓄音機でSPレコードもお楽しみいただけます。月に一度ほど、RCCラジオの人気番組「バリシャキNOW」にお呼びいただき、蓄音機で2枚回しています。次回は3月8日、月曜日に出演する予定です。さて本日はここまで。今日も明日も名盤聴こう!それでは、みなさん、ごきげんよう。

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