コロナ禍で困窮する大学生に食料を無償で提供。「学生食料支援プロジェクトあおぞら」代表・小丸涼さん

―「学生食料支援プロジェクトあおぞら」について教えてください

新型コロナウイルス感染症の影響により、大学を自主退学する学生やアルバイトをクビになる学生が増えています。「学生食料支援プロジェクトあおぞら」は、コロナ禍の生活で食費や生活費を切り詰めて生活している大学生に対して無償で食料品や日用品を提供する支援活動を推進しています。

このプロジェクトは、広島県内にある大学付近の施設で実施しており、2020年7月11日、広島大学の学生を対象に開催した第1回目のプロジェクト以来、今年7月25日時点で9大学の学生を対象に30回開催し、1954人の学生に対して支援を行いました。

―プロジェクトが発足した経緯は?

プロジェクトのメンバーは、若者の要望や悩みを聞き、その声を基に活動しています。コロナの感染が本格的に拡大し始めた2020年4月、わたしたちは広島県内の大学付近の駅や広島市中心部に赴き、200人を超える若者を対象に「コロナ禍での生活」をテーマにしたアンケートを実施し、多くの声を集めました。その中の学生の約6割が「コロナの影響でアルバイトがなくなった」、「食費を削って、もやしだけで生活している」などと悲鳴を上げており、ついには自主退学を考えている学生が約4割にも上っていたことに愕然としました。

コロナ禍の生活に苦しむ学生の窮状が判明し、「このままの状況でいいのだろうか。これは深刻な事態だ」と重く受け止めていたところ、アンケート実施時期と同時期の2020年5月、高知県において「ほっとまんぷくプロジェクト」という学生向けの食料支援活動が開始されました。高知県での食料支援プロジェクト開催を受け、広島県でも実施すべき!という方針となり、このプロジェクトがスタートしました。

―具体的には、どのような活動をされていますか?

食料支援プロジェクトあおぞらでは、お米やパスタなどの炭水化物、レトルトカレー、カップ麺、みそ汁などのインスタント食品のほか、野菜などの生鮮食品を配布しています。食品以外では、ティッシュ、マスク、洗濯洗剤、食器用洗剤、生理用品などの日用品を配布しています。生理用品については配布の開始が遅くなってしまいましたが、毎回のプロジェクトで女子学生の皆さんが必ず持って帰られる姿を見ると、「本当に求められている物資だ」と感じますね。困っていた学生も多いのに配布が遅れたことが悔やまれます。また、プロジェクトでは物資の配布と併せて、大学生の悩み相談に乗る「対話ブース」を設け、学生が困っていることを聞いてアドバイスしたり、アンケートを実施したりしています。

―日々の生活に苦しむ学生にとっては心強い存在ですね。食料などは、どのように手配されているんですか?

プロジェクトの主旨に賛同してくれた県内全域の方からのカンパや支援によって調達しています。「三島食品」さんや「社会福祉法人正仁会あいあいねっと」さんといった地元企業から食料品を提供してもらうこともあり、とても助かっています。

毎回の支援活動はまさに引っ越し作業です。最も大変なのは、プロジェクト当日の準備と運搬作業。当日は、会場施設まで支援物資を運搬・搬入し、学生たちに届けるために一つ一つ仕分けます。例えば、60キロの米は10合ずつ、レトルト食品は3個ずつ、などと学生1人分単位に小分けするのですが、100人分以上の物資を準備するので仕分けだけでもかなり大変なんですよ。いつもヘトヘトになってしまいますが、頑張って準備しただけに、支援を受けた学生が笑顔で帰っていく様子を見ると嬉しいですし、ほっこりとした気持ちになります。

―プロジェクトで接した学生の反応はいかがですか?

学生たちはプロジェクトを開催するたびに喜んでくれています。スタートした当初は、「食費を削っていたので助かりました」といった食料の支給を喜ぶ声が多かったですね。中でも、「2~3日食事を空けていた」、「食費がないわけではないけれど、ずっと一人で家にいたせいで食欲が湧かなくなった」など、軽度のうつ症状を発症した声には衝撃を受けました。

プロジェクト開始から約1年経った現在では、「学校が面白くない」、「対面授業を受けたい」という声が増えてきたように肌で感じます。今年入学した大学1年生や、コロナの感染が拡大し始めた2020年春に入学した現在の大学2年生は、在宅でのオンライン講義ばかりで友達がほとんどできていないようです。

そうした生活状況が影響しているのか、プロジェクトに参加した学生がアンケートに回答する際、「俺も教育学部なんだよ」、「同じ学科なんだね」などと他の学生と話している様子を見ると、このプロジェクトが学生の交流の場となっている気がします。プロジェクトという限られた時間で、たとえ一時的なものであれ、学生たちが楽しそうに交流して笑顔になっているのを見ると微笑ましいですし、「少しでも学生の助けになっているのかな?」とやりがいを感じます。

―食べ物を届けるだけでなく、学生たちの交流の場も作っているのでは?

そうですね。たしかに学生の中には、「今度は自分が誰かを助ける番になりたい」という気持ちを抱いてプロジェクトのボランティアスタッフに志願する学生も増えてきました。これまでに約70人の学生がボランティアスタッフの登録をしてくれ、現在では、約40人の学生が支援の現場で活躍しています。私たちとスタッフ登録した学生のつながりだけで終わらず、ボランティアの学生が自身の友人をプロジェクトに誘ってくれることもあり、支援の輪がどんどん広がっていますね。

加えてプロジェクト開始から約1年が経過し、新聞社やテレビ局などの各種メディアが注目してくれるようになったことで知名度も上がり、内輪の関係者だけでなく外部の方々ともパイプが持てるようになってきました。

―小丸さんの考えるこのプロジェクトの魅力とは何でしょうか?

やはり、若者が若者を支援し、同世代でつながることのできる点ではないでしょうか。私たちの支援を受けた学生がボランティアスタッフになり、さらにその友人がプロジェクトに参加するなど、同世代が頑張って支援活動している姿を見て、自分も手伝おうと思う気持ちが湧いてくるのは学生同士の連帯感にちがいありません。

人と会えないこの時代、同じ世代だからこそ話せることもあるはずです。プロジェクトに参加すれば、同世代の子がいるということで、友人に会えない生活を送っている学生が、新しい仲間と一人で抱えていた悩みを共有したり、吐き出したりできるので安心できるのかもしれませんね。

―プロジェクトに臨むにあたり、大切にしている思いはありますか?

学生の中には、「食料がないのは自分が努力してないから」とネガティブに感じる自己責任の強い学生もいますし、「食欲が湧かなくなった」などと軽度のうつ症状を発症してしまう学生もいます。また、支援を“受ける”という側面に目がいってしまい、「困っていないので支援してもらわなくていい」という態度を見せる学生もいます。

コロナのせいで支援を受けなければならないほど生活が苦しくて大変な時こそ、みんなで助け合うことの大切さや、「大変なのはあなたのせいじゃないよ」と伝えていきたいですね。わたしたちの活動はSNSでのみ紹介しているため、広島県内の全ての学生にはプロジェクトの情報が行き届いていないと思います。まだこんな支援があるという情報が届いていない学生たちにも是非、活用してもらえるように周知活動にも拍車をかけなければ!

また、学生の悩みを聞くだけ聞いて終わりにしないよう、学生から集めた生の声を大学や自治体に届ける活動にも注力することで公助の力を引き出せるようにしています。自治体職員の方から「形の悪い野菜はお店では売りにくく、市場に出回らないので食料支援に回せないか検討している」と言われたこともあり、自治体もサポートを前向きに考えてくれているのが分かったときは嬉しかったですね。

―いま最も必要とされるプロジェクトなので継続を望みたいところですが、今後はどのような活動をされる予定ですか?

コロナがいつ収束するのか?目安は分かりませんが、収束するまでプロジェクトは継続していくつもりで、活動期限も決めていません。ありがたいことに、わたしたちの主旨に賛同してくれる方が増えたり、メディアが取り上げてくれたことで、さらに多くの支援を得られるようになり、プロジェクトの規模はどんどん大きくなってきています。規模が大きくなればなるほど、メンバーの作業は増えますが、学生ボランティアや自治体の方々の協力をいただくことで、より多くの学生たちに寄り添っていきたいですね。引き続き、応援のほど、よろしくお願いします!

●プロフィール

小丸涼(こまる りょう)
「学生食料支援プロジェクトあおぞら」代表

1994年広島市生まれ、安佐南区在住。
2016年「トリニティカレッジ広島医療福祉専門学校」を卒業後、社会福祉法人三矢会「太田川学園」勤務を経て、2019年より団体職員として活動。2020年7月から「学生食料支援プロジェクトあおぞら」に取り組んでいる。
趣味はカラオケ、映画、ゲーム、ネットサーフィン。無類の猫好きのため、自宅で猫5匹と同居中。

◎問い合わせは、学生食料支援プロジェクトあおぞら

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